Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第120巻第3号

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特集 神経症性障害はどこまで薬物療法で治せるのか―その限界と多角的治療の実際,そして可能性―
パニック症はどこまで薬物療法で治せるのか―その限界と多角的治療の現状,そして可能性―
塩入 俊樹
岐阜大学大学院医学系研究科精神病理学分野
精神神経学雑誌 120: 195-204, 2018

 最近のメタ解析では,パニック症(PD)の治療としては,薬物療法と認知行動療法(CBT)などの精神療法が有効とされ,両者の効果サイズは,同等とするものから,薬物療法の方が高いとするものまである.また,最近の複数の薬物療法のガイドラインでは,第一選択薬は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)あるいはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であるが,治療が奏効しない場合の選択肢には,三環系抗うつ薬だけでなく,気分安定薬や抗てんかん薬,非定型抗精神病薬まで,さまざまな薬物が挙げられている.このように薬物療法はある程度確立されてはいるものの,PDの経過は,慢性・再発性で,症状も波動的であることがわかっている.言い換えれば,PDの病態が解明されていない以上,薬物療法であれ,精神療法であれ,治療は対症療法でしかないので,現実は当然,治癒率は低く,治療抵抗性(難治性)PDは珍しくないということになる.このような現状において,われわれ精神科医には,①個々の患者にとってベストな治療とは何かを模索しながら,②精神療法や環境調整を適切に実践し,③治療抵抗性の諸因子を除きながら,④PDに対する新たな知見を積極的に吸収し,患者に寄り添っていく姿勢が求められている.

索引用語:不安症群, 治療ガイドライン, SSRI, 認知行動療法, 治療抵抗性>
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