Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第120巻第2号

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特集 カタトニア(緊張病)の治療を問い直す
カタトニアに対するベンゾジアゼピン治療と電気けいれん療法
坂寄 健
日本医科大学付属病院精神神経科
精神神経学雑誌 120: 99-105, 2018

 器質性精神障害から統合失調症,気分障害までさまざまな病態でみられるカタトニア(緊張病)は,共通してベンゾジアゼピン系薬剤の効果があるとされている.しかし,今日においてカタトニアは均一な病態であると言い切ることはできず,ベンゾジアゼピン系薬剤と電気けいれん療法(ECT)によって劇的な改善を認める症例の印象に引きずられ,安易に画一的な診断・評価・治療に陥りがちになっている傾向があるように思う.いかなる症候を伴う状態像を真にカタトニアと呼称すべきかの議論も尽きないが,カタトニアは顕著な精神運動障害と意志発動の障害が特徴であり,経過や主訴を患者本人から事前に確認することは困難である.その症状のなかには昏迷のように,個別にはカタトニアの症状とは限らないものも含まれる.そのため,診断にあたっては患者が示す全体像がカタトニアによるものであるか評価することが重要である.今回,カタトニアに対する診断・評価と治療法について自験例を提示し考察した.ベンゾジアゼピン系薬剤を使用するにあたっては,「カタトニアという症候」に対しての改善効果の評価と併せて,「カタトニアを生じさせている基礎疾患」に対しても治療効果をもたらしているか留意する必要がある.カタトニアを生じさせている基礎疾患への治療アプローチなくして良好な転帰は得られない.さらに,カタトニア症状の発現から早期の治療介入がなされることが転帰に影響をもたらすと指摘されており,必要以上にベンゾジアゼピン系薬剤の投与を躊躇することはないが,投与開始にあたっては,カタトニアの症候の吟味を十分に行い,ベンゾジアゼピン系薬剤の投与によって生じるかもしれない有害事象の可能性を検討し,基礎疾患の鑑別・診断を速やかに行う必要がある.そのなかで循環器系への影響も十分検討され,かつ,基礎疾患への治療を目的として,あるいは致死的な転帰を回避する目的としてECTは選択されるべきであると考える.

索引用語:カタトニア, ベンゾジアゼピン, ECT>
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