Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第120巻第2号

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総説
神経性やせ症に対する包括的入院治療プログラム―静岡県摂食障害診療ネットワークの構築―
栗田 大輔, 竹林 淳和
浜松医科大学医学部精神医学講座
精神神経学雑誌 120: 85-92, 2018

 神経性やせ症で認められる身体合併症は多彩で,しばしば重篤である.また,低栄養状態にある患者に対して栄養療法を行う際は,リフィーディング症候群と呼ばれる,時に生命を脅かす合併症に注意が必要である.ところが,精神科スタッフの多くは身体治療の経験に乏しく,その対応に難渋してきた.浜松医科大学精神科では,神経性やせ症の患者に対して安全,かつ効率的に入院診療を行うために身体治療プログラムと精神療法プログラムからなる包括的入院診療プログラムを考案した.本プログラムの導入により,リフィーディング症候群の指標となる低リン血症は皆無となった.さらに,身体治療にかかわる業務の負担が大幅に軽減されたことから,入院患者数は大幅に増加した.本稿ではこの入院診療プログラムについて,身体治療を中心に解説し,導入前後の治療成績の変化についても報告する.身体的にリスクを抱える神経性やせ症の患者は,精神科から内科や小児科に身体治療を依頼することが多い.そのため,神経性やせ症は主に総合病院で診療が行われてきた.しかし,神経性やせ症の治療ができる施設・治療者は極めて少ないのが現状である.少数の医療機関に患者が集中することで,治療の開始が遅れたり,スタッフが疲弊するなどの問題も生じている.2015年に摂食障害の診療体制を整備することを目的として,摂食障害治療支援センター事業が開始された.当科は全国の3つの治療支援センターの1つとして指定を受けており,唯一,精神科の施設である.静岡県では本事業の一環として,当科の診療プログラムに基づき摂食障害に対する治療方針を統一し,身体的重症度に応じて総合病院精神科と単科精神科病院とで患者の診療を分担し,摂食障害診療の均霑化を図っている.

索引用語:神経性やせ症, 身体治療プログラム, リフィーディング症候群, 摂食障害治療支援センター>
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