わが国における周産期メンタルヘルスの重要性の指摘や実際の活動は,産科を中心に展開されている.平成28年度診療報酬改定では,産科に有益となる加算が認められたが,精神科と産科が連携して精神疾患合併妊産婦を管理することの重要性が評価されたものと考えられ,周産期におけるメンタルヘルス活動において大きな前進といえる.一方で,この加算化により,総合病院精神科に限らず精神科医療機関は,産科医療への積極的な協力や情報提供が必要となり,産科の要請に即応できる体制が求められるようになってきている.さらに,平成29年3月31日に厚生労働省から発行された産婦健康診査事業に関する文書には,精神科との連携が必要と考えられる項目が複数あり,今後産科医療機関や行政からの協力要請のさらなる増加は間近に迫った重要課題といえる.平成27年の東京都の精神科診療所・精神科病院,分娩取扱施設を対象としたアンケート調査では,精神科医への妊産婦に対する薬物療法についての啓蒙活動,産科医との協働,精神疾患合併妊産婦に対するガイドライン作成,診療報酬化などの必要性が挙げられたが,ガイドラインと診療報酬に関してはすでに実現に至っている.総合病院は多職種が同時に集まることができる貴重な場であり,さまざまな角度から妊産婦の状態を評価することが可能である.ただし,その対応には限界があることから,いかにして限られた資源を有効に活用していくかが課題となる.具体的には,多職種による情報共有,産科スタッフへの教育,精神科医の育児支援体制への理解,スクリーニング技術の向上と対応の標準化が挙げられる.
総合病院に求められる周産期リエゾン活動
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科精神行動医科学分野
精神神経学雑誌
120:
45-51, 2018
<索引用語:周産期, リエゾン, 総合病院, 多職種, 母子支援>