Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第8号

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教育講演
第112回日本精神神経学会学術総会
現代における宗教と精神医学―救済と治療―
大宮司 信
北翔大学教育文化学部
精神神経学雑誌 119: 581-586, 2017

 この論文で著者は,精神医学の立場から宗教を研究するという視点ではなく,宗教あるいは宗教学から精神医学をみるという視点から宗教の1つの治療性について議論した.精神医学は心の病気からの回復を提供するが,一方,例えば大震災の後における臨床宗教師の活動,ターミナルケア,自殺予防のように,宗教はよりひろい癒しを提供する.さらに宗教は文化的に共有される癒しを人々に与える.著者はその1つの例としてドイツの小さな村に170年ほど前に起こった悪魔憑きの出来事を挙げた.この出来事はまず村の人々の癒しや信仰の覚醒を与え,やがて広くキリスト教世界の中で共有されるようになり,最終的にはドイツの思想界の潮流に影響を与えた.著者はこの出来事は精神医学よりもひろい癒しを宗教はもたらすことを示すと考える.医学がそうであるように,精神医学は人々に日常的な生活を助ける手段を提供するのに対して,宗教はより深い,人間の生きる意味に対する癒しを提供すると考える.精神医学はこの線にそって癒しの役割を果たすべきと結論する.

索引用語:救済, 癒し, 治療, 治し, 宗教>
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