Advertisement第113回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第4号

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教育講演
第112回日本精神神経学会学術総会
誰にでもできる薬物依存症の外来治療
成瀬 暢也
埼玉県立精神医療センター
精神神経学雑誌 119: 260-268, 2017

 薬物依存症は「精神疾患」である.しかし,精神科医療に敬遠され,「病気」ではなく「犯罪」として捉えられる傾向が今も続いている.専門治療機関は全国に10ヵ所程度しかなく,需要を全く満たしていない.薬物依存症患者が忌避される理由として,治療継続が困難,治療意欲が低い,指示やルールに従わない,暴力的・攻撃的などが挙げられる.これらの問題は治療者が疾患の特徴を理解し,適切に対応することで解決は可能である.薬物依存症の治療は,①治療関係づくり,②治療の動機づけ,③精神症状に対する薬物療法,④解毒・中毒性精神病の治療,⑤疾病教育・情報提供,⑥行動修正プログラム,⑦自助グループ・リハビリ施設へのつなぎ,⑧生活上の問題の整理と解決援助,⑨家族支援・家族教育に集約される.これらは何ら特殊なものではない.専門病棟やプログラムがなくても治療は可能である.忌避感情をもたずに外来で短時間かかわるだけでも治療効果が期待できる.薬物依存症患者の薬物使用は,一般に「興味本位に快楽を求めた結果」で自業自得とされるが,実際は「人に癒やされず生きにくさを抱えた人の孤独な自己治療」とみることが適切である.彼らの多くは,虐待,いじめ,性被害の経験をもち,深く傷ついている.「病気」である依存症患者に必要なのは,「罰や懲らしめ」ではなく,「治療・支援」であろう.薬物依存症の治療を困難にしている最大の原因は,治療者の患者に対する陰性感情・忌避感情である.患者が治療を求めてきたときに,断薬を強要せず,再使用を責めず,受容的にかかわり信頼関係を築いていくことが大切である.治療者が「ようこそ」という思いでかかわり続けることで,治療継続率や断薬率が高まることを示した.

索引用語:薬物依存症, 外来治療, 回復支援, 忌避感情, 治療成績>
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