Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第4号

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特集 DSM-5 時代のアルコール依存の診断と治療のゴール―断酒か飲酒量低減か―
DSM-5における診断の変化とその意義
宮田 久嗣
東京慈恵会医科大学精神医学講座
精神神経学雑誌 119: 238-244, 2017

 2013年に「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)」が改訂され,第5版(DSM-5)が刊行された.DSM-5では,精神疾患の疾患カテゴリーや診断基準に大きな変更が加えられた.本稿では,アルコール依存領域の診断の変更が,依存臨床においてどのような意義をもたらしたかを考える.まず,今回の改訂により,依存という用語がなくなり,かわって使用障害となった.これにともない,使用障害の診断基準では,飲酒の結果生じる社会生活の障害が重視され,従来より軽症の患者も診断に組み入れられるようになった.これらの変化の意義を依存臨床の立場から考えると,①DSM-IV-TRと比較して,より早期の段階の患者が治療対象となり,早期発見,早期介入の可能性が広がる,②したがって,治療においても,従来のように断酒を唯一の治療目標とするのではなく,飲酒量低減という選択肢も可能となり,治療に多様性が生まれる.③患者にとっても,“依存症”という抵抗感や否認につながる病名よりも,“使用障害”のほうが,疾病の受け入れに有用である.以上のように,DSM-5の診断の変化が臨床にもたらす意義を検討し,飲酒量低減をはじめとした新たな治療選択肢の可能性を検討する.

索引用語:DSM-5, アルコール使用障害, アルコール依存, 断酒, 飲酒量低減>
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