Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第4号

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原著
縦列型精神科・身体科連携による自殺企図患者の企図後フォローアップ効果に関する予備的研究
白鳥 裕貴1), 太刀川 弘和1), 山田 典子2), 大塚 敬士2), 山形 晃彦2), 根本 清貴1), 妹尾 栄一2), 土井 永史2), 新井 哲明1)
1)筑波大学医学医療系臨床医学域精神神経科
2)茨城県立こころの医療センター
精神神経学雑誌 119: 227-237, 2017

 【背景】自殺未遂歴は,最も明確な自殺企図の危険因子であることが知られている.また,自殺企図で退院した直後の期間は,自殺率が高いことが知られており,退院後のフォローアップが自殺再企図率を低下させることも示唆されている.平成22~26年度の5年間,茨城県立こころの医療センターでは,近隣の総合病院に搬送された自殺企図患者に転院後ケース・マネジメントを行う,縦列型連携による自殺再企図防止事業を行った.しかし事業期間中,事業参加の同意が得られず十分な介入が困難な患者も少なくなかった.本研究では,事業参加した患者と非参加者との間において自殺再企図や再入院などの自殺関連イベントまでの期間の差を比較することで事業の効果を評価する目的で,診療録を後ろ向きに調査し,自殺企図で当院外来を受診したが事業参加を拒否した群と,事業に参加した群とを比較する後ろ向き研究を行った.
 【方法】自殺企図を理由に近隣の総合病院を受診し,診療情報の提供を得て当院に入院した患者を対象とした.対象者のうち,当該事業参加について同意が得られたものは当該事業対象者として介入した(介入群).介入に同意が得られなかったものを非介入群とした.両群の自傷行為・再企図・再入院のイベント発生の有無について後日後ろ向きに診療録調査を行い,結果を集計し,退院後から再企図までを生存期間として,Kaplan-Meier法による生存期間分析を行った.調査期間は,患者の自殺企図を理由とした入院日から,平成28年3月31日までの期間とした.
 【結果】介入群は,非介入群に比して統計学的有意に自殺関連イベントの発生率が低かった(Log Rank test,χ2=5.124,P=0.024).退院から自殺関連イベントまでの期間の平均は介入群が134.3週,非介入群では,64.4(43.0~85.8)週であった.縦列型の総合病院と単科精神科病院の連携においても,今後介入の精度を高めれば,退院後の自殺再企図などのイベントを減少できる可能性が示唆された.縦列型の治療モデルは,総合病院精神科が少ないわが国の地域医療においては一般化しやすく,有用と思われた.

索引用語:自殺予防, 自殺未遂, ケースマネジメント, 縦列型連携>
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