現在,精神科に限らず,さまざまな診療科目におけるさまざまなガイドラインが作成されている.ガイドラインは,一般的には,あるべき医療を模索した一定の参考意見として臨床現場に提示される一資料と位置づけられるものであるが,その種類や性質にはさまざまなものがあり,学会や団体などによって内容の異なるガイドラインが出されることも珍しくなく,ガイドラインに対する一義的評価は難しい.公益財団法人日本医療機能評価機構が厚生労働科学研究費補助金により運営する「Minds」は,日本で公開された診療ガイドラインを収集し,評価選定の作業を行っている.一方,医療過誤の有無が争われる医療関係訴訟では,ガイドラインは,主に過失判断の参考基準となる証拠として取り上げられてきた.裁判所が医師の注意義務および義務違反の有無を判断する際に,医学会などにより作成された診療ガイドラインが重視され,「ガイドライン」に一定の行動規範性を肯定しようとする傾向があるが,これは,医療界がガイドラインに対して抱く理解とはかなり落差がある.現在,ガイドラインに対する医療界と法曹界との相互理解が積極的に求められている.
裁判所の過失判断基準とガイドライン
1)弁護士(第一東京弁護士会)
2)木ノ元総合法律事務所
3)公益社団法人日本精神科病院協会顧問弁護士
2)木ノ元総合法律事務所
3)公益社団法人日本精神科病院協会顧問弁護士
精神神経学雑誌
119:
173-179, 2017
<索引用語:医療関係訴訟, 過失判断基準, 医療水準, 医師の責任>