心理療法については体系化された狭義の心理療法とそれらを支える基盤のような広義の心理療法がある.狭義の心理療法に先立ち,広義のそれが必須であることならびにその特質について述べた.さらに多層にわたる要因が輻輳して生じている複雑多様化した昨今の心理的問題に対しては,個別的にして多面的な,複眼の視野で観察し,多軸で考え支援する統合的心理療法の適用が望まれると提案した.この統合的心理療法と他の主な心理療法との異同を考察してその特質を示し,心理療法の統合とは理論や技法の折衷にとどまるのではなく,セラピスト自身の統合が心理療法の質的向上に資することを述べた.
第111回日本精神神経学会学術総会
心理療法の基本と統合的心理療法
大正大学大学院
精神神経学雑誌
118:
531-538, 2016
<索引用語:心理療法の基本, 統合的心理療法, 多面的観察, 多軸による思考, セラピストの統合>