Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第5号

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特集 精神科専門医に求められる資質について
精神科専門医であり続けるということ
平島 奈津子
国際医療福祉大学三田病院精神科
精神神経学雑誌 118: 344-350, 2016

 著者は本学会の専門医制度整備委員の立場から,委員会での討議を踏まえ,新たな専門医制度のもとで精神科専門医更新に必要な要件について,その理念を中心に述べた.このたびの専門医制度改革の骨子は,医療現場の混乱の是正や医師の信頼回復などを医師以外の外部機関に委ねるのではなく,医師集団自らが医師のあり方や質の維持などを自主規制する組織を設立し,運営するところにある.専門職集団としての誇りや自律性を失わないためにも,国民が納得できるような透明性の高い制度を自らの手で構築し,良質の専門医を育成する必要がある.すなわち,制度の構築と専門医教育とは切り離して考えることはできない.専門医についても,それにふさわしい研修を続けて,その能力を維持・向上させることが期待される.専門医の資格認定は,専門医としての質を向上させるための研修を継続していることを示すとともに,その質を保証するものになる.専門医資格を更新するための最も重要な条件は,診療に従事していることである.精神科の場合の「診療」は他科領域とは異なり,病院内での臨床に限らず,多岐にわたる.精神科専門医としての知識・技能・態度の評価は,症例レポート審査によって行う.また,精神医学に関連する内容の研修に加え,医療倫理や医療法制などのプロフェッショナリズムに関連したものや,臨床研究やEBMに基づく医療など最新の医療知識を取得するために必要なものが研修すべき内容に含まれる.新たに専門医になる者は何らかの研究に携わり,その成果をまとめて発表する能力と実績が求められるが,精神科領域では,現実状況への配慮から,専門医更新に「学術業績」は必須条件としなかった.これは専門医機構も承認している.このたびの専門医制度改革における専門医とは,個人的な資格であると同時に,その質の維持に責任をもつ自律的な集団の一員としての役割も担うものである.

索引用語:専門医, 精神科医, 医学教育, プロフェッショナリズム, 日本専門医機構>
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