Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第3号

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特集 抗うつ薬の適切な使用法をもう一度考えてみる
抗うつ薬・抗不安薬使用における多剤併用の問題点およびその整理の仕方
渡邊 衡一郎
杏林大学医学部精神神経科学教室
精神神経学雑誌 118: 133-138, 2016

 うつ病および不安症治療における薬物療法では,QOLに著しく影響を及ぼすような副作用が少ないこともあり,気軽に新規抗うつ薬や抗不安薬が処方されることが多い.うつ病治療において配慮すべきこととして,抗うつ薬が奏効しなかったときには,診断の再検討,副作用の評価,併存状況や心理社会的因子の評価,治療同盟やアドヒアランスについての評価,薬物動態を考えて用量設定の再検討などが必要となり,安易に薬物療法で全てを解決しようとする前に広い視野をもつことが望ましい.単剤で開始し,奏効しなかった場合にまずは変薬が推奨されるが,それでもよくならない場合,副作用の問題を抱えながらも結局いろいろなパターンの「薬の足し算」に頼っているのが現状である.整理にあたっては,同系統の薬物を1つにし,中止後症状やリスク要因に配慮しながら慎重に減量を進めていく.抗不安薬については,ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬の長期使用と認知症との関係が示唆されている.依存形成に至りやすい過程としては,短時間型,高力価,最高血中濃度到達時間が短い薬物などが頓服として投与されるために多剤併用,高用量につながりやすい.さらに離脱症状のために中止困難となり,その結果として,長期間にわたって服用,依存が形成されてしまう可能性が指摘されている.常用量依存とならないためには,有効最少量を投与し,漫然投与を避ける必要がある.減量にあたっては,説明冊子を用いてゆっくり減らすことで整理は可能といえる.

索引用語:抗うつ薬, 抗不安薬, 多剤併用, ベンゾジアゼピン, 依存>
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