Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第3号

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症例報告
遷延性の重度昏迷および脳波異常を認め,約2年後に著明な回復を示した青年男性の1例
伊津野 拓司1), 髙木 俊輔3)4), 中村 元昭1)2), 成島 健二3)5), 内山 登紀夫6), 西川 徹3)
1)神奈川県立精神医療センター
2)昭和大学医学部精神医学講座
3)東京医科歯科大学大学院精神行動医科学分野
4)マクリーン病院精神科
5)東京都立多摩総合医療センター精神科
6)福島大学人間文化発達学類
精神神経学雑誌 118: 125-132, 2016
受理日:2015年9月29日

 26歳男性が祖母の死,東日本大震災を契機に遷延性の重度昏迷を示し,入院となった.脳波上,全般性棘徐波複合および局在性棘波の頻発を認めた.精神病性障害やてんかん症候群を含む器質性精神障害では重度昏迷の説明が難しく,広範に身体精査したが入院中には診断に至らなかった.抗てんかん薬やベンゾジアゼピン系薬剤を投与するも重度昏迷は改善しなかった.その後,生涯を通して初回と考えられる全般性強直間代発作を契機に顕著な回復を認め,自発的に食事を摂り,流暢な会話が可能となった.約2年間,ほとんど一切の意思表示(発語や書字)を認めず,経鼻胃管なしでは摂食も内服もできなかった青年が,一人で外来やデイケアに通えるようになった.昏迷の改善後にPARS,DISCO,WAIS-IIIにて発達歴および知的水準を精査したところ,自閉スペクトラム症(ASD)および軽度知的能力障害が明らかとなった.現時点では,てんかんの診断は保留とした.WingらはASD患者の二次的併存症として,思春期から成人期早期にかけて約17%の出現頻度でカタトニアを報告している.ASDを有する者が,思春期から成人期にかけてカタトニアを初発する可能性があり,なかには重度カタトニアを呈することがある.思春期から成人期にかけてのキャリーオーバーの時期に注意すべき症候として,実地臨床上示唆となる可能性があるため文献的考察を含めて報告する.

索引用語:自閉スペクトラム症, カタトニア>
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