Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第4号

※会員以外の方で全文の閲覧をご希望される場合は、「電子書籍」にてご購入いただけます。
特集 どこから薬物療法を実施すべきか
社交不安障害(SAD)どこから薬物療法を始めるべきか
永田 利彦
なんば・ながたメンタルクリニック
精神神経学雑誌 117: 283-291, 2015

 社交不安障害(SAD)は稀ではない精神障害で,世界精神保健日本調査セカンドでは,この10年間でSADの12ヵ月有病率が0.7%から2.3%と数倍に増えた可能性が見出されている.一方でSADに対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の適応が認められ約10年経つ現在でも,スピーチ恐怖症との認識が多く,どこから精神障害であるのか,どこから薬物療法を行うのかという疑問が残っている.これまでの二重盲検試験を概括すると,SSRIのエビデンスは全般性SADに限られており,ベンゾジアゼピンの方がSSRIより統計学的な効果量が大きいが,ベンゾジアゼピンは治療初期のSAD症状改善には有効であっても,「治癒」を阻害し,SAD典型例以外では悪化させる危険すらある.総合すると,NICEガイドラインが示すように単純なSADでは認知行動療法など精神療法的アプローチを優先する方が合理的と考えられた.一方で,全般性SADが大うつ病性障害や摂食障害を発症して初めて受診した場合,全般性SADに気付かれず「治療抵抗性うつ病」となり,休職,退職,ひきこもりとなっている例が多く,背景の全般性SADに気付き,それに対する薬物療法や精神療法の必要性があることを論じた.

索引用語:社交不安障害/社交不安症, 選択的セロトニン再取り込み阻害薬, ベンゾジアゼピン, 大うつ病性障害>
Advertisement

ページの先頭へ

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology