Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第1号

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特集 うつ病治療における行動活性化―「休息と薬物療法」を超えていかに導入するか―
うつ病の行動活性化療法―理論と実践―
中尾 智博
九州大学大学院医学研究院精神病態医学
精神神経学雑誌 117: 18-25, 2015

 近年,うつ病治療における行動活性化療法(BA)に注目が集まっている.認知療法理論は,うつ病患者の認知の歪みに着目し,それを変容させるための過程として行動の変化を求めるのに対し,BAはうつ病を持続させる鍵症状として,嫌悪状況や社会的状況からの回避行動に注目する.回避行動はうつ病の発症から再発に至るあらゆる過程においてよくとられる行動であるが,快事象の減少もしくは不快事象の増加を引き起こすことにより,結果的にうつ症状を強化している.患者にとって意味のある行動目標を適切に設定し達成することができれば,その行動は正の強化を受けさらに活性化され,結果的に患者の気分や認知にもよい方向の変化をもたらし,うつ症状を回復させる.本稿では,行動活性化がうつ病回復の契機となった症例を2例呈示する.1例は職場不適応から休職を繰り返しうつが遷延化した30代男性,もう1例は強迫から職場不適応,ついで抑うつ,情緒不安定に至った30代女性の症例である.いずれも回避的な行動パターンがより病状を遷延化させていたが,BAへの取り組みを通じて適切な活動が気分面に改善をもたらすことを体験し,徐々に自己効力感も回復の兆しをみせた.回避行動がうつの持続要因となっている症例においては,BAは十分な有効性をもつ可能性が示された.

索引用語:行動活性化療法, うつ病, 認知行動療法, 回避行動>
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