精神疾患による苦痛や負担を軽減すべく,さまざまな治療が行われるが,既存の治療が奏効しない場合がある.特に複数の特定の薬剤を十分期間・十分量投与しても改善しない精神疾患は難治性精神疾患と定義されている.これらは現在治療の標的とされている病態生理とは異なった機序をもち,同じ症状を呈する症候群として診断がつけられていると推測される.本稿では,統合失調症とうつ病に焦点をあて,既存の病態仮説と,技術の発展に伴い新たに提唱された仮説,および新規薬剤治療とニューロモジュレーション治療を紹介する.難治性疾患の治療を進展させるにあたり,生物学的かつ臨床的な異質性と生物学的併存性を認識しつつ,病態を解明していくことが必要である.このために,国際的にデータを共有してサンプル数を拡大し,人工知能や機械学習を用いてビッグデータを解析し,新たなフェノタイプを探索しようとするバイオタイピング研究が進められている.
難治性精神疾患のプレシジョン・メディシン
慶應義塾大学医学部精神神経科学教室
精神神経学雑誌
126:
612-621, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-098
https://doi.org/10.57369/pnj.24-098
<索引用語:統合失調症, うつ病, ディープ・フェノタイピング>