依存症治療のコツを1つ挙げるとすれば,それは「やめさせようとしないこと」である.これまでわれわれは,依存症患者の飲酒や薬物使用の有無にばかりとらわれ,断酒・断薬を強要し,飲酒・薬物使用を責めてきた.断酒・断薬はにわかに継続できることではない.生きるためにアルコールや薬物を必要とした患者も少なくない.患者は,「やめない」のではなく「やめられない」のである.治療者が症状を責めるスタンスでは信頼関係は築けない.薬物依存症患者に対して,「不寛容・厳罰主義」では治療にならない.反治療的であり誰のためにもならない.患者が少しでも害を減らし健康に生きていけることが第一の目標のはずである.必要なのは,「刑罰ではなく支援」である.ハームリダクションでは,司法的介入よりも使用による害を低減して,健康を維持・向上することを優先し,薬物使用の害にさらされている人に対して人権を保障し,必要な支援が提供される.薬物使用の有無は問われない.その薬物が合法か違法かも問われない.患者を尊厳ある一人の人間として対応する.「やめさせる支援(強要する支援)」ではなく,「生きづらさの支援(寄り添う支援)」が信頼関係を築く.人に癒された患者はエンパワメントされ,結果として薬物を手放す方向に向かう.容易にできないことを無理強いしても,効果はないばかりか偏見や対立を助長する.依存症患者は生きづらさをかかえ,スティグマによりさらに傷ついてきた.ハームリダクションの考えの導入により,「誰も傷つかない,誰も傷つけない治療・支援」が可能になる.スティグマを助長する厳罰主義を排し,人と人を信頼でつなぎ,エンパワメントする支援のあり方が,ハームリダクションの背景に根づいている.ハームリダクションの考えは,わが国の依存症治療・支援において最も欠けていた大切なことを示している.それは,精神科医療全般にも通底する普遍的なことでもある.
https://doi.org/10.57369/pnj.24-054
はじめに
依存症患者に対して,対応のコツを1つ挙げるとしたら,それは「やめさせようとしないこと」である.この逆説的ともいえる対応に,依存症という病気の本質がみてとれる.
患者は,やめたいと思っている.そして同時にやめたくないと思っている.この両価性を理解していないと,治療者は誤った対応をしてしまう.例えば,治療者が患者に対してやめさせようとする思いが強いと,患者はその思いと同じ,あるいはそれ以上にやめさせられないように抵抗する.つまり,やめない方向に患者を強いることになる.
逆に,やめることを強要しなければ,それだけで良好な関係を維持しやすくなる.治療者や家族からアルコールや薬物の話題を出されるたびに,患者は不快な表情を浮かべて身構える.それをやめるだけで両者間の緊張は緩和されるはずである.「依存症は意志の力ではコントロールできなくなる病気」と患者に説明しておきながら,やめさせようとすることは矛盾している.患者に断酒・断薬を強要することは,自分で何とかする問題だという誤ったメッセージになる.患者は,「がまんするしかない」と思うであろう.
家族や治療者が,患者に対して断酒・断薬を強要したり,飲酒・薬物使用を叱責したりすると,容易に摩擦や対立が生まれ両者の関係が悪化していく.回復のためには信頼関係の構築が不可欠であるのに損なわれていく.患者はさらに孤独となり,自尊感情は傷つき,追い詰められて,否応なく飲酒・薬物使用に向かう.これまで,家庭や医療現場で繰り返し行われてきたのはこのような現象であろう.
依存症は病気である.懲らしめてよくなる病気はない.むしろ悪化する.わが国において,依存症患者の基本的人権が尊重されているとは言い難い現状を考えると,患者の人権を尊重したハームリダクションの理念と実践は,患者との治療関係の構築に関して,わが国の依存症治療・支援に最も欠けている大切なことを提示している.
I.ハームリダクションの背景にある理念
ハームリダクションとは,厳罰を与えて薬物使用をやめさせるよりも,薬物使用によって生じる健康・社会・経済上のダメージを低減することに焦点づけをする公衆衛生的な方策であり,薬物使用者,家族,コミュニティに対して,寛容さをもって問題を軽減する現実的な政策・プログラムである1).薬物を使っているか否か,それが違法薬物であるか否かは問われない.本人の困っていることを支援する.薬物依存症者であっても基本的人権と尊厳は守られ,スティグマによって傷つけられることは許されない,という哲学に基づいている.
ハームリダクションのプログラムにより,孤立している薬物使用者に人の支援が届く.そうすることで,適切な情報・相談支援・医療支援・行政サービスなどにつながりやすくなり,薬物問題の深刻化を防ぐことができる.これまで支援が必要な人たちに支援が届かない状況が放置されてきた現状をふまえ,薬物使用者を孤立させず,支援につなぐ必要がある.ハームリダクションでは,薬物使用者に対する偏見やスティグマを軽減し,敷居の低い支援を提供する.
わが国は,薬物問題に「ダメ.ゼッタイ.」に象徴される不寛容・厳罰主義を一貫して進めてきた.これは,「薬物依存症は病気」とする視点とは対極にある.臨床的には,不寛容・厳罰主義では薬物問題の治療にならない.それどころか,反治療的である.さらには,偏見や人権侵害を助長し,スティグマを強化する可能性がある.そもそも不寛容・厳罰主義は刑事司法の考え方であり,医療・福祉の考えではない.
世界の先進国もかつては厳罰主義で対応していた.しかし,刑罰による薬物政策の弊害が明らかになり,大きく方向転換をしてきた歴史がある.それが米国を中心としたドラッグコートであり,欧州を中心としたハームリダクションである.
重要な点は,「その人の薬物使用の有無にかかわらず,違法か否かにかかわらず,その人の困っていることを支援する」「薬物をやめさせる支援ではなく,その人の生きづらさを支援する」ことである.
この支援のスタンスが,患者を支援につなぎ,生きづらさを軽減し,QOLを高め,薬物を手放す方向に促していく.わが国に欠けているのはこのような発想ではないだろうか.わが国にハームリダクション政策を導入するべきと言っているのではない.その背景にある理念が,わが国の閉塞した依存症医療の現状を打開する起爆剤になることを期待しているのである.
II.依存症治療におけるハームリダクションアプローチ
これまでの「不寛容・厳罰主義」のアンチテーゼとして,「やめさせようとしない依存症治療」を提唱したい.つまり,依存症治療におけるハームリダクションアプローチ8)である.
1.やめさせようとしない依存症治療とは
「やめさせようとしない依存症治療」とは,「やめることを無理強いしない依存症治療」であり,「やめさせることにとらわれない依存症治療」である.飲酒や薬物使用が続いているか止まっているかにかかわらず,患者に対して現実的に必要な治療や支援を提供する.
これまでわれわれは,アルコールを飲んでいるか否か,薬物を使っているか否かにばかりとらわれていた.そのため,断酒・断薬を焦り,強要する対応になっていた.依存症患者にとって断酒・断薬の継続が望ましいことは言うまでもない.しかし,それを近視眼的に強いることの弊害については,ほとんど検討されてこなかった.
「やめさせようとする治療」と「やめさせようとしない治療」のメリットとデメリットについて表1に示す8).
2.埼玉県立精神医療センター外来での患者の意識調査から
アルコール依存症および薬物依存症患者に対して,著者が実施した患者の意識調査の結果を示す6).
【方法・対象】
埼玉県立精神医療センター(以下,当センター)に通院中の依存症患者に対して,患者調査を実施した.2016年4~5月に同意を得られた患者に質問紙を渡し,無記名で回答を得た.調査対象者数は103名(男性62名,女性41名),平均年齢44.9歳(±12.6),物質別では,アルコール41名,覚せい剤37名などであった.
【結果】
1.再飲酒・再使用時の気持ちは,「やめようと思う」が57.0%,「どちらかというとやめようと思う」が20.0%であり,77.0%が自らやめようとしていた.
2.家族から酒や薬物をやめることを強要されたとき,「どちらかというと飲もう・使おうと思う」が16.5%,「飲もう・使おうと思う」が40.8%であり,57.3%が飲酒・薬物使用の欲求が高まった.
3.病院スタッフから酒や薬物を「やめなさい」と言われたとき,44.7%が飲酒・薬物使用の欲求が高まった.
4.再飲酒・再使用を家族に責められたとき,「どちらかというと飲もう・使おうと思う」が10.8%,「飲もう・使おうと思う」が50.9%であり,61.7%が飲酒・薬物使用に向かっていた.
5.同様に,再飲酒・再使用して病院スタッフに責められたとき,「どちらかというと飲もう・使おうと思う」が12.9%,「飲もう・使おうと思う」が41.6%であり,54.5%が飲酒・薬物使用に向かっていた.
6.飲酒・薬物使用する一番の理由は,「苦しさがまぎれるから」が58.8%,「楽しくなるから」が29.5%,その他が11.8%であった.
治療者・支援者は患者に対して,断酒や断薬を強要してはいけない.そして,飲酒・薬物使用を責めてはいけない.患者の6割が苦しいからやめられない.とすると,この苦しさが軽減しなければアルコールや薬物は手放せないであろう.
3.患者は「やめない」のではなく「やめられない」のである
苦しいのに手放せないのは,依存症者の飲酒・薬物使用は,「人に癒やされず生きづらさをかかえた人の孤独な自己治療」として重要な役割を果たしてきたからである2)5).患者がアルコールや薬物を手放すことは,過大なストレスと丸腰で戦おうとするようなものである.飲酒・薬物使用という対処法しかもたない患者がそれらを手放すことは,どれほど大きな不安・恐怖だろう.
これまでの依存症治療では重症例が多いということなどもあり,このような背景を理解せずに,患者からアルコールや薬物を取り上げ,ただちに手放すことを強要してきた.問題意識を感じていても手放す覚悟ができない多数の患者は,取り上げられないよう必死に抵抗した.
その態度に家族は,呆れて叱責し,嘆き,悲しんだ.見捨てることを繰り返し,宣告し,死んでほしいと怒りをぶつけた.治療者は,手放すことを問答無用に強要し,決心がつかないことを責め,失敗を叱り,否認が強いと嘲笑した.そして,患者が変わらないことにあきれ,脅して見捨てる.患者は責められ孤立を深め,飲酒・薬物使用に向かう.
こうして,患者と家族や治療者との溝は深まった.患者も家族も傷つき疲弊する.治療者も患者にやめさせようとすればするほど,不全感を募らせ,自信を失い,自尊心を傷つけられ,患者に陰性感情を抱く.誰も救われない.誰もが傷つき信頼を築くことから遠ざかっていった.
III.ハームリダクションの考えに基づいた依存症治療の実際
次に,依存症治療におけるハームリダクションアプローチとは,具体的にどのようなことなのかを示したい.
1.ハームリダクション外来
著者の勤務する当センターでは,依存症外来を「ようこそ外来」と称して,患者が治療から脱落しない工夫を行っている7).患者に対して歓迎の意を伝え,断酒・断薬を強要せず,飲酒や薬物使用を責めず,患者の困っていることに焦点づけをする.決して無理にやめさせようとしない.患者が何とかしたいという思いに寄り添い,肯定的にかかわり続けていく.日々の生きづらさや悩みを受け止め,患者の主体性を尊重した対応を心がけている.
また,患者の同意のない入院はさせないこと,覚せい剤の再使用があっても通報しないことなどを保障3)し,受診に伴う不安を軽減している.治療者は,治療継続に最大限配慮した対応を日常的に行いつつ,ワークブックなどの治療ツールを活用し,治療の動機づけを行う.
このような方法をとった結果,依存症専門外来で,覚せい剤依存症患者の初診からの外来継続率(3ヵ月間)が36~39%と報告されている状況で,当センターでは87%にまで高めることができた.また,新規薬物依存症患者322名に対する予後調査において,治療継続率が3ヵ月以上:75.8%,6ヵ月以上:61.5%,1年以上:46.3%,3年以上:18.0%,6ヵ月以上の完全断薬率が43.8%であった.後述のLIFE参加者が4.6%,ダルク利用者が5.9%であり,通常の外来治療だけでも一定の効果が得られることを示唆している6).
2.ハームリダクション外来プログラム
当センターでは,外来薬物依存症再発予防プログラム「LIFE」を実施している4).LIFEは,週1回のワークブックを用いたグループワークであり,全40回のプログラムであるが,終了後も参加は自由である.対象は外来受診だけでは薬物使用が止まらない薬物依存症患者である.
LIFEでは必ずしも断薬を目的とはしていない.孤立から脱し,人とつながることを重視している.正直な思いを安心して話せ,「信頼できる仲間」と「安心できる居場所」を得られることを優先する.技法や知識を身につけることよりも,同じ問題をもつメンバーとプログラム参加を続けることで,仲間意識を育み,人に癒されることが最大の目的である.
LIFEでは,薬物使用しても治療に来られたこと,薬物使用を正直に話せたことが賞賛される.薬物が止まっているかどうかよりも,正直になれているかどうかが回復の目安になる.LIFEが温かく癒される場所になるよう心がけている.
最初はやめられなくても,プログラムに通い続けていると人とつながることで孤独ではなくなる.人に癒され,生きづらさが軽減すると薬物を手放せるようになっていく.薬物使用の有無にとらわれず,プログラムから脱落しないように配慮することが大切である.
開始当初の参加45名の予後調査によると,9ヵ月以上継続参加者の3ヵ月以上完全断薬率は61.5%であるのに対して,9ヵ月未満では25.0%であった10).治療プログラム継続の重要性を示している.
3.入院治療のハームリダクション化
入院治療にも変化がみられる.患者の困っていることへの支援を前提とする介入は,断酒・断薬を単一目標に掲げて,プログラム参加を義務づける方法とは異なる.もちろん,患者が断酒・断薬を望むのであれば,そのための治療プランを立てるが,近視眼的に断酒・断薬にとらわれた対応ではなくなっている.外出・外泊時の飲酒・薬物使用を責めることもない.症状として捉え対応する.このように,入院治療においてもハームリダクションの考えが浸透し始めている.
IV.患者への具体的な介入について
ここまで,ハームリダクションの理念に基づいた治療のあり方について示してきた.次に個別の患者に対しての具体的な介入について述べたい.
例えば,覚せい剤依存症患者の場合,患者にとっての重要なハーム(害)は逮捕されることであり,精神病状態で自身や周囲に危害を加えることであろう.また,ベンゾジアゼピンなどの鎮静薬依存症患者の場合,もうろう状態での外傷や事故,アルコールなどとの併用による呼吸抑制などが考えられる.薬物使用がにわかに止められないのであれば,害を最小限にとどめることは重要である.その具体的な対応を提案して患者と話し合い,可能な方法(表2, 表3)を取り入れる.これらはいずれも,患者を気遣い,患者の害を低減する現実的なテーマである.
このような提案をすることは,治療者が,違法薬物の使用や過量服薬を認めているようで,違和感をもつ人は多いかもしれない.しかし,薬物依存症患者に対して,治療者までもが,「ダメ.ゼッタイ.」と強要・叱責することは,患者を追い詰め,孤立させ,薬物に向かわせるだけである.
できないことを無理強いすることは害である.やめられないのであれば,まずは患者を気遣い,その害を減じる対応を講じることが自然ではないだろうか.治療者は,患者を責めて突き放すことなく,味方になって寄り添っていく姿勢が必要である.患者を尊重し気遣う対応から,信頼関係が築かれ,患者が本音を話してくれるようになる.患者と治療者との接点を増やし,考えを共有した多職種チームでかかわり続けていくことで安定してくるのである.
V.依存症治療におけるハームリダクションアプローチの留意点
ハームリダクションの考えに基づいた依存症治療では,1.無理にやめさせようとしないため治療につながりやすい,2.人権に配慮した支援を提供するため信頼関係を築きやすい,3.敷居の低いサービスを提供するため支援につながりやすい,という大きな利点がある.このような対応は,患者の基本的人権を尊重し,誤解や偏見,スティグマから患者を守る.依存症治療に有効な理由を表4に示す.
ハームリダクション政策では断酒・断薬を主目標とはしていないが,依存症治療におけるハームリダクションアプローチでは,治療者は断酒・断薬に向けてのビジョンを常に描いておく必要がある.治療者は,患者がアルコールや薬物を手放すことを放棄するのではない.その点で断酒・断薬を目標に掲げる治療とは対立するものではなく,互いに補完するものである.患者が断酒・断薬を望むのであれば,そのための支援をすみやかに行う.
やめることを直接支援するよりも,その背景にある孤独感,自信喪失,自責感,羞恥心,人間不信,怒り,不安,抑うつ気分,悲しみ,よろこびの喪失,希望の喪失,信頼感の喪失,加えて経済的問題,住居問題,生活環境問題,就労問題,家族問題など,患者を取りまく生きづらさやネガティブな要素の軽減に重きをおく.
つまり,患者の困っていることに焦点づけをする.やめられなくても治療者のスタンスは変わることなく必要な支援を継続する.治療者が留意する点について表5に挙げる.
これまでの対応が,治療者と患者の間に摩擦や対立を生み,互いを傷つけ,失望と燃え尽きを繰り返してきたとするならば,見直さなければならない.患者に問題を直面化し,支援を断ち,ギブアップさせて治療に従わせる方法は,エビデンスがないだけではなく,危険であり倫理的にも問題がある.
依存症は健康な人とのかかわりにおいて回復する.健康な治療者とは,患者に対して陰性感情をもたずに敬意と親しみをもてる人である.患者に共感できる人である.そのために,治療者は,自身の家族・友人・同僚などの大切な人と信頼関係を築けていて,人から癒されていることが前提となる.信頼関係をもてている治療者が,人間不信が強い依存症患者を無条件に信じることができる.治療者自身が人に癒されており,健康で余裕をもてていることが求められる9).
おわりに
ハームリダクションは,欧米諸国が薬物使用者に対し,逮捕・収監して強制的にやめさせる手段を推進しようとする状況で,注射器交換プログラムが当事者主導で開始されたことに始まる.その効果が徐々に認められ,多くの国々で採用されるようになった10).ハームリダクションの誕生は,当事者主導という点において,アルコホーリクス・アノニマス(Alcoholics Anonymous:AA)に始まる自助グループの実践や回復施設であるダルクの実践と重なる.当事者中心の視点の重要性を改めて感じる.
依存症患者は生きづらさをかかえ,社会や支援者,自身のスティグマによりさらに傷ついてきた.スティグマを助長する不寛容・厳罰主義を排し,人と人を信頼でつなぎエンパワメントする支援のあり方が,ハームリダクションの背景に根づいている.この考えは,わが国の依存症治療・支援において最も欠けていた重要なことである.
さらには,飲酒・薬物使用をさまざまな問題行動や症状に置き換えると,一般精神科医療においても新たな視点がみえてくる.表面に現れた問題行動や症状を無理に抑えようとせず,その背景にある患者の生きづらさや困っていることへの支援を続け,信頼関係を育んでいく.患者が治療者と信頼関係を築き,人から癒されるようになると問題行動や症状は落ち着いていく.
ハームリダクションは,依存症医療のみならず,精神科医療全般に通底する大切なことを提示している.
編 注:本特集は第118回日本精神神経学会学術総会シンポジウムをもとに宮田久嗣(医療法人光生会平川病院)を代表として企画された.
本論文内の調査研究については,埼玉県立精神医療センター倫理委員会の承認を得て実施した.
なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない.
1) Harm Reduction International: What is harm reduction? (https://hri.global/what-is-harm-reduction/) (参照2024-02-15)
2) Khantzian, E. J., Albanese, M. J.: Understanding Addiction as Self Medication: Finding Hope Behind the Pain. Rowman & Littlefield, Lanham, 2008 (松本俊彦訳: 人はなぜ依存症になるのか―自己治療としてのアディクション―. 星和書店, 東京, 2013)
3) 成瀬暢也: 覚せい剤依存症の治療に際しては, 患者に「通報しないこと」を保障するべきである. 精神科, 21 (1); 80-85, 2012
4) 成瀬暢也, 山神智子, 横山 創ほか: 専門病棟を有する精神科病院受診者に対する認知行動療法の開発と普及に関する研究(1). 平成24年度精神・神経疾患研究委託費「アルコールを含めた物質依存に対する病態解明及び心理社会的治療の開発に関する研究」(主任研究者: 和田 清). 研究成果報告会抄録集. 2012
5) 成瀬暢也: 病としての依存と嗜癖. こころの科学, 182; 17-21, 2015
6) 成瀬暢也: 薬物依存症の回復支援ハンドブック―援助者, 家族, 当事者への手引き―. 金剛出版, 東京, p.161-168, 2016
7) 成瀬暢也: 誰にでもできる薬物依存症の外来治療. 精神経誌, 119 (4); 260-268, 2017
8) 成瀬暢也: ハームリダクションアプローチ―やめさせようとしない依存症治療の実践―. 中外医学社, 東京, p.64-75, 2019
9) 成瀬暢也: 厄介で関わりたくない精神科患者とどうかかわるか. 中外医学社, 東京, p.161-171, 2021










