Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第126巻第2号

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特集 抗体介在性自己免疫性脳炎と精神医学
自己免疫性精神病―岡山大学病院における知見を含めて―
髙木 学1), 岡久 祐子2), 酒本 真次2), 樋之津 健二1), 河合 弘樹1), 来住 由樹3), 山田 了士1)3)
1)岡山大学学術研究院医歯薬学域精神神経病態学
2)岡山大学病院精神科神経科
3)岡山県精神科医療センター
精神神経学雑誌 126: 114-125, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-020

 自己免疫性脳炎の存在は,『8年越しの花嫁』『Brain on Fire(脳に棲む魔物)』にて書籍,映画化され,広く知られるようになった.抗NMDAR脳炎は,比較的若年女性に多く,原因となる神経自己抗体のなかで最多頻度であり,次に頻度が高い抗VGKC複合体抗体脳炎は,比較的高齢男性に多い.近年,これら以外にも,精神疾患の病態に関与する神経伝達物質受容体抗体が次々と発見され,検出可能となってきている.さらに,内因性精神病と診断される患者の検討は,血清で行われていたため批判も多かったが,髄液内の神経自己抗体の存在を示唆する報告も増えており,精神疾患の新たな治療法として免疫療法への期待が高まっている.神経細胞膜または核内自己抗体によって,精神症状のみを呈する(神経症状を全く,または微細にしか認めない)患者群は,典型的な自己免疫性脳炎とは区別して,自己免疫性精神病(AP)と呼ばれる.しかし,脳神経内科領域における「自己免疫性脳炎」と精神科領域における「自己免疫性精神病」は概念の違いが大きく,さまざまな診断基準,検体(血清,髄液)の違い,抗体検査法の違いのために,依然として「自己免疫性脳炎」に保険適用がある検査や治療法はない.抗NMDAR脳炎は,早期発見による早期治療介入が有効であり,治療の遅れは予後不良と関係する.そこで,統合失調症,気分障害,てんかん,睡眠障害などさまざまな精神疾患の鑑別診断としてAPを考える必要がある.神経自己抗体を検出し免疫療法の根拠となる確定診断を行うことは重要であるが,実臨床では,確定診断に至らなくともprobable診断のみで免疫療法の積極的な検討が必要となる.本稿では,岡山大学病院での経験症例を交えながら,APの臨床症状,診断,検査法,検査所見,病態機序,治療と予後,精神疾患患者で多くみられる血清抗体の意味を解説し,本分野の将来の展望を考察する.

索引用語:抗NMDAR脳炎, 自己免疫性精神病, 抗VGKC複合体抗体脳炎, 非定型精神病, 自己抗体検査法>
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