Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第5号

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特集 措置入院制度を見直す― 主に連携の視点から―
措置診察における連携のありかた―入口における2つの連携―
根本 康
さいたま市立病院精神科
精神神経学雑誌 125: 415-422, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-058

 措置入院制度はさまざまな問題を抱えているが,他害行為に関する医療と司法の連携の可能性と,措置診察における身体評価を通じた連携の可能性について述べた.他害行為について,措置診察における医学的な判断では「精神障害である」かつ「自傷他害のおそれのために医療及び保護の必要性」の判断を行うのに対し,司法的な判断では犯罪の成立要件を検証して起訴するか判断するという根本的な違いがある.さらに判断にかけられる時間や判断するための情報量が大きく異なる.この2つは判断プロセスが異なるために,措置診察の時点で医療と司法との連携は難しい.しかし「いわゆるグレーゾーン事例」では司法との連携が必要となる場合があり,どのタイミングで司法と連携をとり,どのような手続きで処遇を判断するのか,といった連携モデルを今後検討していくことが重要である.近年,身体疾患に起因した精神症状やCOVID-19の除外などで措置診察における身体評価の必要性が増している.しかし措置診察前の身体評価は時間的な制約もあり,あらかじめ身体科医療機関に評価目的を明確に伝えるなどの工夫が必要である.また身体評価の時期は,措置入院を予定する医療機関の診療体制や身体科医療機関との連携状況などによって異なってくる.地域によって違うかもしれないが,身体評価を行う医療機関の選定が難しい現状があり,日頃から地域内で身体科医療機関と精神科医療機関で身体合併症医療に準じた連携を模索する必要がある.将来的には身体管理も可能な指定病院でまず措置入院を受けていくシステムを作ることも必要かもしれない.

索引用語:措置診察, 司法, グレーゾーン事例, 身体評価, 連携>
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