神経性過食症(BN)や過食性障害(BED)に対する認知行動療法(CBT)の有効性は,先行研究で実証されており,主要な治療ガイドラインで推奨されている.一方で,必要なトレーニングを受けたセラピストの不足や,セラピストの育成や治療に費やす時間とそれに見合う採算性などが実施阻害要因となっている.そのため,実用性が高く,治療への受容性が高い認知行動療法の開発が求められている.海外の主要ガイドラインにおいては,BNやBEDの治療において簡易的,低コスト,良好な治療効果を得られる低強度治療法として,CBTの手法を用いたガイドセルフヘルプが推奨されている.近年,精神疾患に対してインターネットを利用した治療介入をすることで,費用対効果と利便性を高められることが期待されている.過食症に対するオンライン認知行動療法(iCBT)の有効性は複数のランダム化比較対照試験で検証されている.NICEガイドラインでは,BNやBEDの治療法としてインターネットを用いたガイドセルフヘルプ(iGSH-CBT)が提案されており,欧米においてその有効性を実証するエビデンスが蓄積されつつある.BNやBEDに対するiGSH-CBTは,短期的には過食や嘔吐などが軽減することが示されている一方で,寛解するまでには至らず,長期的な治療効果に関しても十分な知見が得られていない.また,本邦においても今後の追加研究が必要な状況である.本稿では,摂食障害に対するiGSHの効果を検証した報告と,iGSH-CBTの国内での検証の状況について報告する.
過食症に対するオンラインガイドセルフヘルプ認知行動療法の開発
1)国際医療福祉大学医学部精神医学
2)千葉大学大学院医学研究院精神医学
3)学而会木村病院
2)千葉大学大学院医学研究院精神医学
3)学而会木村病院
精神神経学雑誌
124:
868-876, 2022
<索引用語:神経性過食症, 過食性障害, ガイドセルフヘルプ, オンライン認知行動療法>