Advertisement第119回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第124巻第10号

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特集 作業療法・精神科リハビリテーションの現在
作業を基盤とした,地域に溶け込んだ介護予防
横井 賀津志
大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科
精神神経学雑誌 124: 725-731, 2022

 作業療法士は,作業を通して健康と安寧を促進することに関心をもつ,クライエント中心の健康関連専門職である.作業はすべての人の健康と安寧に寄与することから,介護予防領域においても作業に焦点をあてたプログラムが実践されている.作業とは,その人が「したい,する必要がある,することを期待されている」活動を指す.作業はその人のアイデンティティを醸し出し,作業をすることで自分を感じ取ることができる.そして,過去の作業の積み重ねによって,今の自分が存在する.作業と健康に関して,d+b3=shという公式がある.作業をする(doing)ことで,自分が存在し(being),理想の自分になり(becoming),所属し(belonging),生存と健康(survival and health)を可能にするという意味である.人には,健康を獲得するために必須の作業があり,作業には,他者や社会とつながる力も備わっている.社会とのつながりの低下は,認知機能,身体機能,精神機能を低下させる引き金となるため,介護予防において注目されている.介護予防を実現するためには,社会とのつながりを維持,もしくは新たに獲得する必要がある.今回,他者や社会とつながる力を有する作業の力を振り返り,高齢者の認知機能低下の抑制に関して,作業への挑戦と作業に認知刺激を組み込んだ二重課題介入を紹介し,論議する.個別性の高い作業を用いた介入は,今後の介護予防戦略の1つとして考慮されるべきである.

索引用語:作業, 介護予防, 認知機能, 作業を基盤とした実践, 主観的記憶障害>
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