Advertisement第117回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第123巻第9号

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総説
自閉症スペクトラム障害と物質使用障害の合併に関する文献展望
田宮 聡1)2), 水馬 裕子1), 加藤 亮1), 長尾 早江子1)
1)呉みどりヶ丘病院
2)姫路市総合福祉通園センター
精神神経学雑誌 123: 555-568, 2021
受理日:2021年6月3日

 従来,精神科医などの精神医療従事者は,自閉症スペクトラム障害(ASD)特性は物質使用リスクに対して保護的に作用し,ASDと物質使用障害(SUD)の合併は少ないと考えてきた.しかし近年ASD概念の変遷に伴ってその多様さが認識され,この考え方が見直されるようになった.すなわち,先述した臨床像に合致しないASD児者も多く,ASD/SUD合併の問題について再考する必要性に迫られている.著者らは,ASD/SUD合併の頻度,ASD児者の物質使用の心理社会的側面,およびその評価と治療に関する文献展望を行った.合併頻度については,児童青年に関する10報と成人に関する14報を展望した結果,ASD/SUD合併は従来考えられていたよりも高い可能性,およびASD特性に由来するSUDリスクは成人期への移行期に高まる可能性が示唆された.その理由の1つは,ASD児者の脆弱性が,成人期への移行期に社会的要請が高まるとともに露呈するからかもしれない.ASD児者は定型発達児者よりストレス耐性が低いため,陰性感情に対する自己治療として,または社会的機能改善手段として物質使用に及ぶことがある.したがって,ASD児者のSUD評価と治療を行う精神医療従事者は,ASD児者の生活における物質使用の役割に注目する必要があり,一部の文献はアルコール使用障害に対しては節酒が現実的な治療目標になる可能性も指摘している.治療にあたっては,集団療法より個人療法に重きをおく,洞察志向的精神療法より支持的/指示的精神療法を用いるなどASD特性を考慮に入れることが重要である.さらに,ASD児者の日常生活の構造化や,社会的,職業的支援も欠かせない.文献の多くは海外のものであり,物質使用に関する制度的相違や国民の考え方の違いを考慮すると,わが国の精神医療関係者は,これらの知見がわが国のASD/SUD児者にどうあてはまるか検討する必要がある.

索引用語:自閉症スペクトラム障害, 物質使用障害, アルコール使用障害, 合併症>
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