Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第123巻第7号

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特集 日常精神科臨床で遭遇する対処困難な過眠の見立てと対応
アリピプラゾールの低用量投与が睡眠に与える影響
大島 勇人1)2), 小鳥居 望1)3), 森 裕之1), 小曽根 基裕1), 内村 直尚1)
1)久留米大学医学部神経精神医学講座
2)特定医療法人勇愛会大島病院
3)医療法人仁祐会小鳥居諫早病院
精神神経学雑誌 123: 438-445, 2021

 最近,睡眠相後退症候群へのアリピプラゾール(APZ)の低用量投与が,総睡眠時間の短縮と朝の良好な覚醒に寄与したことを示した症例が報告されている.今回,われわれは起床困難を伴ううつ病例と,夜尿を伴う発達障害例に低用量のAPZを投与し,それぞれの随伴症状に改善を認めた症例を経験したので,その経過とポリソムノグラフィ(PSG)所見に若干の考察を加え報告する.起床困難を伴ううつ病例ではAPZを1 mg,夜尿を伴う発達障害例にはAPZを3 mg,それぞれ夕食後に投与した.起床困難を伴ううつ病例では,アクチグラフにおいて朝の起床困難が改善し,睡眠時間の短縮がもたらされた.夜尿を伴う発達障害例では,APZ投与前には毎日認められていた夜尿が,APZ投与直後から週1~2回に減少した.いずれの症例もPSGでは,ノンレム,レム睡眠量には大きな変化がなかった一方で,皮質下覚醒の特性を示すK-complexesやDelta burstが増加していた.このような睡眠中の皮質下脳活動の増加を反映する所見は,低用量APZのドパミン神経系の賦活作用が関連すると考えられ,起床困難や夜尿の改善効果の一部を説明しうるものと考えられた.一方,ドパミンアゴニスト作用を有するにもかかわらず睡眠の浅化がみられないのは,徐波睡眠の増加に関与する5-HT2Aアンタゴニスト作用が関係していると推察された.今後,このような症例が集積されれば,低用量APZの夕刻投与は,起床困難や夜尿への新しい治療選択肢となると考える.

索引用語:起床困難, 夜尿, アリピプラゾール, 低用量, PSG>
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