Advertisement第116回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第122巻第4号

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原著
生活保護による精神科長期入院―1956年『在院精神障害者実態調査』原票の分析―
後藤 基行1), 安藤 道人2)
1)立命館大学大学院先端総合学術研究科
2)立教大学経済学部
精神神経学雑誌 122: 261-281, 2020
受理日:2020年1月23日

 【目的】本研究では,精神病床における長期在院の歴史的・制度的背景を探るために,史料的価値の高い実態調査の個票を用いて長期在院と入院医療費財源との関連を分析した.とりわけ生活保護法での医療扶助入院が,社会保険での入院よりも長期在院化と強い関連があるか否かを検証した.【対象】厚生省が1956年に行った在院精神障害者実態調査の個票を用いた.具体的には,在院票から抽出した標本からさらに初回入院の個票を抽出し,統合失調症,躁うつ病,てんかんの合計808名の個票を分析対象とした.また頑健性の検証のために退院患者の個票も分析対象とした.【方法】医療費財源と在院期間の関係を検証するために重回帰分析による検証を行った.性別,年齢,疾病や看護の状態,保護者の種類や婚姻の有無,入院前発症期間,医療施設効果などの交絡要因を制御したうえで,在院期間を医療費財源のダミー変数に回帰することにより,医療費財源と在院期間の関係を検証した.【結果】最も多くの交絡要因を制御した場合,生活保護法での医療扶助入院は,社会保険での入院と比べて,統合失調症では約9ヵ月,躁うつ病では約10ヵ月,てんかんでは約17ヵ月在院期間が長くなっていた.また標準誤差は大きいものの,生活保護法での医療扶助入院と在院期間の関連は,保護者が親,配偶者,兄弟である場合に強いことも示唆された.【考察】新生活保護法の施行後まもない1956年という時点において,患者の家族・個人属性などの要因を制御しても,すでに医療扶助入院患者は社会保険入院患者と比較して長期在院となりやすい傾向があった.生活保護法での医療扶助入院の長期化の背景には,家庭の生活困窮度や低いケア力という家庭的要因や,医療扶助による入院無料化や家族の意向を反映しやすい同意入院の仕組みという制度的要因があったと推察される.このような生活保護法での医療扶助入院における入院長期化は現在に至るまで存在し,戦後の精神病床入院の一貫した特徴の1つであると考えられる.

索引用語:生活保護, 医療扶助, 同意入院, 措置入院, 精神衛生法>
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