Advertisement第116回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第122巻第1号

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特集 健康生成の病跡学―サルトグラフィの試み―
Goetheにとっての女神Salus:Christiane Vulpius
佐藤 晋爾1)2)
1)筑波大学医学医療系茨城県地域医療教育センター精神科
2)茨城県立中央病院精神科
精神神経学雑誌 122: 25-33, 2020

 Antonovsky, A. の健康生成論(salutogenesis)から,小林はサルトグラフィ(salutography)を提唱した.これは精神疾患発症を回避した偉人たちの生涯をたどることで,実臨床へ貢献する学問と考えられる.本稿では,サルトグラフィの観点から,躁うつ病患者だったGoetheを献身的に支えた,彼の妻Christianeについて検討した.Goetheが精神的に大きな破綻もなく生活できたのは,Christianeの支えが大きかったと考えられる.一方,Christianeに相当の負担があったと推測されるが,彼女自身,精神的不調に陥らずに過ごせたのは,彼女なりの工夫があったと思われる.Christianeは自分の生活も大切にし,自己犠牲に偏らないようにしていた.さらに夫が病気であることを認識し,他人の協力を得ることを躊躇わなかった.そして旺盛な自立心で夫から距離をとりつつ,自身が得意とした「他人を世話すること」が夫の介護で行き詰ると,より負担の少ない夫以外の者への「世話」を楽しむことで,夫へのケアを続けていた.Christiane von Goethe夫人の生涯は,精神疾患家族が介護やケアでいかに燃え尽きを回避するかという点でヒントを与えるものと考えられた.

索引用語:サルトグラフィ, ゲーテ, クリスティアーネ, ケア>
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