不知火病院では,1989年からうつ病専門のストレスケア病棟を開設し,治療実践を行ってきた.新病棟の設計にあたっては種々の治療環境に配慮して建築した.治療では,メランコリー型うつ病の予想外の攻撃性に戸惑い,対応を迫られた.時代の変化で,うつ病も含めた精神疾患全体に軽症化が起こっている可能性がある.特に変化したものは若年層のうつ病である.若年層では自己愛傾向の高さや自責感の低さと他罰性が特徴で,発達障害の診断はつかなくても,発達の偏りをもつうつ病が増加してきている.これに対し若年層のうつ病でも変化しなかったものは,治療経過である.従来のうつ病治療と同様に,感情抑圧や攻撃的感情の処理が行われると内省や人格の発達が起こってくる.時代により,表層の症状は変化してきているが,深層にある依存へのアンビバレンスは変化がないと考えられる.
第114回日本精神神経学会学術総会
うつ病の入院治療とストレスケア病棟
医療法人社団新光会不知火病院
精神神経学雑誌
121:
567-573, 2019
<索引用語:ストレスケア病棟, うつ病の治療, 若年層の症状の変化, 攻撃性, アンビバレンス>