Advertisement第115回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第121巻第6号

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特集 摂食障害,その人格の病理,社会的背景の影響と治療的意味―痩せすぎモデル禁止法に向けて―
健康体重でのダイエットの危険性
水原 祐起1)2)3)
1)京都府立こども発達支援センター
2)京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学
3)特定非営利活動法人SEEDきょうと
精神神経学雑誌 121: 473-478, 2019

 世界中で肥満の増加が問題になるなか,日本では20歳代の多くの女性が痩せすぎで,2000年代に入ってから継続して20歳代の女性のうちBMI 18.5未満が20%を超えたままである.にもかかわらず,メディアでは痩せ礼賛の傾向が変わらず,多くの痩せすぎモデルが登場し,若年女性の理想像となってしまっている.痩せすぎであることは健康を害し,さまざまな身体症状や精神症状を引き起こすことがこれまでの研究で明らかである.さらに,他の先進諸国とは異なり,日本の低出生体重児は医療環境の進歩にもかかわらず母親の痩せすぎにより増加していると考えられ,生まれてくる子どもの精神的・身体的健康にも悪影響が及んでいる可能性がある.これまでの研究では,確かにカロリー制限を行うことで健康寿命を延ばすことが示唆されてきた.しかし,近年発表された,アカゲザルを対象にカロリー制限を行い健康効果を証明しようとした30年にわたる研究では,中高年からカロリー制限を始めた場合は寿命を延長するが,若年からカロリー制限を始めると,反対に寿命が短縮する可能性が示唆されている.WHOはBMI 18.5以上25.0未満を正常とする健康体重を定めているが,この妥当性についても検討が必要である.健康体重は,最低死亡率体重から定められるべきであるが,近年の研究では過体重や肥満による寿命への影響は,医学的治療の進歩によりかなり軽減されているといえ,現在は相対的に痩せすぎであることのリスクが高まっていることがわかってきた.世界的には痩せすぎによる弊害が徐々に把握され,すでに欧米各国では痩せすぎを理想とするような社会的風潮を是正すべく,痩せすぎモデルの出演などについての法的規制が進んでいる.しかしながら,日本ではこのような健康体重でのダイエットの危険性は極めて軽視されており,法的な対策は何らとられておらず,結果として若年女性の摂食障害リスクが助長されたままとなっている.

索引用語:摂食障害, ダイエット, 最低死亡率体重, メディアの影響, 痩せすぎモデル>
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