Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第120巻第3号

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総説
トラウマインフォームドケア―その歴史的展望―
亀岡 智美1)2), 瀧野 揚三2), 野坂 祐子3), 岩切 昌宏2), 中村 有吾2), 加藤 寛1)
1)兵庫県こころのケアセンター研究部
2)大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンター
3)大阪大学大学院人間科学研究科
精神神経学雑誌 120: 173-185, 2018
受理日:2017年12月14日

 近年の国内外の調査によって,トラウマとなるような出来事を体験し,心的外傷後ストレス障害やその他の精神健康不全を呈する人が少なくないことが明らかになった.それに伴って,トラウマ関連障害に対する多くの治療プログラムが開発され,これまでにその効果が検証されてきた.一方米国では,1990年代から,米国保健省薬物乱用精神保健サービス局が中心となって,トラウマ関連障害に苦しむ人々や,逆境的小児期体験のために心身の健康不全や社会不適応状態に陥っている人々に,再被害を与えることなく最良のサービスを提供するにはどうしたらよいかということが模索されてきた.その結果,狭義の治療介入だけではなく,支援にかかわるすべての人々が,トラウマの視点から統合されたサービスを提供することが必要であることが明らかになった.このような流れのなかで,その人が体験したトラウマとなる出来事やトラウマ反応について十分理解することによって,ケアシステム全体の変革をめざす,トラウマインフォームドケアの概念が形作られた.本稿では,トラウマインフォームドケアが発展してきたいくつかの歴史的背景を概観し,わが国における今後の展開について考察した.

索引用語:トラウマインフォームドケア, トラウマ, 歴史的展望, 心的外傷後ストレス障害, 逆境的小児期体験>
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