Advertisement第116回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第6号

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原著
疼痛性障害入院例の臨床像と精神病理学的背景
小林 聡幸1), 斎藤 慎之介1), 須田 史朗1), 岡島 美朗2), 加藤 敏1)3)
1)自治医科大学精神医学教室
2)自治医科大学附属さいたま医療センターメンタルヘルス科
3)医療法人心救会小山富士見台病院
精神神経学雑誌 119: 383-399, 2017
受理日:2017年3月13日

 身体因のみられない慢性的な痛みは慢性疼痛あるいは疼痛性障害と呼ばれ,心因性疼痛とみなして精神科の関与が求められてきた.最近では,末梢性の原因を欠きつつ中枢性の疼痛の感作が生じている病態といった生理学的説明がなされるが,それを客観的に証明する方法はない.疼痛性障害はもとより単一の疾患ではなく,背景に想定されるさまざまな病態が結果として慢性疼痛という表現型をとっているものと考えられ,依然,臨床的には対応に苦慮することが少なくない病態である.われわれは疼痛性障害の入院治療例を難治例とみなして,2005~2014年の10年間に自治医科大学附属病院精神科病棟にて疼痛性障害の治療を行った症例を検討した.同期間にのべ1,955名の入院があったが,疼痛性障害(DSM-IV)の診断で治療を行った症例は12名(男性3名,女性9名)であり,これを研究対象とした.精神医学的な背景からうつ病群2例,神経症群8例,その他群2例と分類した.神経症群8例(症例番号3~10)中,症例4はmECTあるいは精神療法的対応が有効で,症例10ではolanzapineが奏効した.他の6例について治療は無効だった.症例4は神経症的なストーリーを見通しやすく,症例10は知的な問題と加齢の関与が推定されるが,他の症例の症状と生活史の関係は簡単には了解はできない.症例7は境界例水準のパーソナリティで疼痛は多彩な症状の一部にすぎなかったが,症例3は事例化してからは対人関係の不安定さで治療スタッフを困らせたものの51歳で発症するまでは適応はよかった.神経症群の病像はさまざまではあるが,大づかみにはいずれも元来何らかの形で生きづらさを抱えていた人という印象があり,難治性の疼痛性障害には神経症とパーソナリティ障害の中間に位置する病理を背景にもつ一群があるのではないかと推測された.

索引用語:慢性疼痛, 身体表現性障害, 神経症性障害, パーソナリティ障害>
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