Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第11号

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特集 精神科臨床が根差す揺るぎない大地,「臨床精神病理学」のススメ
現場における個別的な精神科診断学と治療学について
太田 敏男
埼玉医科大学神経精神科・心療内科
精神神経学雑誌 119: 855-861, 2017

 実地診療は集団ではなく個を対象とする作業であるという見地から,あらためて診断と治療に関する概念と方法論の整理を試みた.診断という語には,診断単位(≒疾患)という意味とそれに到達するための診断作業という意味とがある.診断単位の決め方には,境界線引きに重点をおいた操作的定義と中核的特徴から周辺までを網羅的に記述した概念的定義とがある.後者は前者より先に存在している.また前者は明確だが恣意性を含む,後者は自然に近いが曖昧という長所・短所を有する.診断作業では,初期にはパターン認識プロセスが重要な役割を果たすが,そこでは概念的定義がわれわれに提供する<診断単位の中核的イメージ>が役立つ.治療では,情報が不完全でかつ結果がよりクリティカルである初期・急性期においては,概念的定義による診断単位を複数想定する意思決定の枠組みが有用である.その後の治療では,一般的方針に個人差要因を加味するアルゴリズム的方法が有効となってくる.

索引用語:診断単位, 診断作業, 概念的定義, 操作的定義, 意思決定>
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