Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第9号

※会員以外の方で全文の閲覧をご希望される場合は、「電子書籍」にてご購入いただけます。
特集 地域移行と病床削減
精神障害者の住居確保―生活困窮者支援の経験から―
滝脇 憲
NPO法人自立支援センターふるさとの会
精神神経学雑誌 118: 673-679, 2016

 NPO法人ふるさとの会は,単身の生活困窮者の居住・生活支援を行っているが,認知症の人,障害のある利用者も多い.また,株式会社ふるさとは,施設や病院などから在宅生活に移行する際など,保証会社の審査に通らなかった人の保証人を引き受けてきた.しかし,利用者の高齢化に伴い,事故率が増加し,保証事業は困難に直面している.一方で,家主も高齢化し,アパート経営に困難を抱えている.そこで,家主の不安に寄りそい,空き家という資源に着目し,住まいと生活支援を組み合わせ,地域サロンを展開する「寄りそい地域事業」を開始した.この事業は,大家・不動産事業者が事業の主体になり,同時にコミュニティ再生の主体にもなることを模索している.「認知症になってもなじみの地域で最期まで」を実現するために,生活支援は何らかの機能障害があったとしても本人が暮らしていけるように住まいを中心として行う.お互い助け合いながら生きる関係をつくり,そこに住んでいる人が,「守られている」という安心と「守っている」という誇りをもつことで生きる力が高まる.サロンは地域の互助を醸成するとともに,不安定就業者やひきこもりの人に就労の場を提供する.家族の介護や貧困の再生産というコミュニティのリスクを軽減することもできる.家主・不動産事業者が安心して空き家を提供するためには,生活支援への社会的信用と提供する支援の質の確保が必要である.行政に対しては,生活支援の認定や職員研修に対する助成や支援などを提言している.居住・生活支援は,医療,介護,予防など専門的なサービスとの連携も活発である.地域移行と病床削減が進められるとすれば,生活支援と医療の側が,相互に配慮しつつ,いかに連携し協力し合ってゆくかが課題になる.

索引用語:空き家, 大家・不動産事業者, 居住・生活支援, 互助, 寄りそい地域事業>
Advertisement

ページの先頭へ

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology