Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第9号

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特集 地域移行と病床削減
精神科診療所からみた地域移行と病床削減
田川 精二
くすの木クリニック
精神神経学雑誌 118: 666-672, 2016

 今,精神科病院は大きく変わろうとしている.精神科病院入院者の約半数は65歳を超えてしまった.一方,新規入院者は早期に退院する傾向にあり,このまま進めば入院者数は漸減,それに伴って精神科病床も「自然に」減少することになる.こうした状況の中で語られる精神障害者の地域移行とは,その多くが高齢化した長期入院者が地域で少しでも充実した生活を送れるようにすることであろう.しかし,この地域移行に精神科病院からも国からも「やる気」が伝わってこない.私立精神科病院といっても民間企業体であるから,動きを作るインセンティブが必要になる.また国にとっては,多すぎると国際的な批判を浴びている精神科病床の削減が何より重要な課題であると位置づけているようにみえるが,もう一方でこの問題は「時限的な問題」,うまくいかなくても時間がたてば「自然に」精神科病床は減少するという考えが垣間見られる.しかし,何より大切なのは地域精神科医療を含めた地域の受け皿である.これがしっかりしないと,せっかく退院してもまた再入院してしまう.いわゆる回転ドアである.病床削減ばかりに目が行ってしまい,医療を含めた地域の整備が軽んじられていると思う.精神科診療所をはじめとした地域の医療資源が力をもてるよう制度的保証を行い,保健福祉施設を整備し,その間の連携が機能するような施策の実施が求められる.

索引用語:地域移行, 病床削減, 長期入院者, 精神科診療所, 連携>
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