Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第4号

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特集 どこから薬物療法を実施すべきか
不眠の患者にどこから薬物療法を開始するか
仙波 純一
さいたま市立病院精神科
精神神経学雑誌 117: 277-282, 2015

 不眠はありふれた悩みであるために,早期発見や早期治療といった啓発活動の対象となりやすい.両者が強調されすぎると,過剰診断と拙速な薬物療法が導かれてしまう.また,臨床場面ではしばしば症状を標的とした薬物療法が行われがちなために,不眠を有するさまざまな精神障害に対して画一的に睡眠薬が投与されやすい.しかし睡眠薬はこれらの処方者側の要因だけでなく,即効的な対応を期待する患者側の要因もあって,開始すると中止は困難であることもよく知られている.そのために臨床家は,不眠の性質だけでなく,患者の生活や仕事内容に沿って,日中の活動性も把握すべきである.緊急性に乏しければ,すぐに治療を開始せず,少なくとも2週分の睡眠日誌の記入を求めることが望まれる.これらの情報を得た上で,睡眠障害が統合失調症やうつ病によるものではなく,また睡眠覚醒リズム障害や不適切な生活習慣によるものでないときに,初めて睡眠薬の投与を考える.その際,患者とともに現実的な治療目標も設定する.睡眠だけに注目せず,症状全体を把握した上での薬物療法の工夫や心理社会的な介入が必要である.

索引用語:不眠, 薬物療法, 睡眠薬, 過剰処方>
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