新しく発表されたDSM-5の統合失調症ではシュナイダーの一級症状の低格化と亜型分類の廃止が特徴となっている.ディメンション診断の採用が見送りになったため,統合失調症がのっぺりとした診断カテゴリーとして立ち現れることとなった.最近の遺伝研究では特にCNVの解析によって,DSMにおけるカテゴリーは遺伝子変異がもたらす情報とは全く関係なく設定されていることが明らかとなっている.そもそも統合失調症は病因が明らかになるまでの暫定的な診断であるために,今後は原因遺伝子やその病態がはっきりした段階で分離されていくことになる.一方で臨床の現場では代替可能な診断基準が存在し得ない現状では,今後もDSMの変化に「不本意ながらも」追随する必要がある.結局臨床と研究では疾患に対し求める視点の高さが異なるため,両方の要請に応えうる診断基準の作成は不可能であり,健全な住み分けのためにもRDoCの研究面での活用が不可欠である.
DSM-5における統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群
大阪医科大学神経精神医学教室
精神神経学雑誌
117:
844-850, 2015
<索引用語:統合失調症, 亜型, DSM-5, 遺伝研究, コピー数多型>