Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第116巻第7号

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特集 児童から成人へのキャリーオーバーを見据えた精神医学の構築
児童精神医学の研修システムにおけるキャリーオーバー
山下 洋, 吉田 敬子
九州大学病院子どものこころの診療部
精神神経学雑誌 116: 584-589, 2014

 児童精神医学は子どものこころの問題を扱う重要な分野であり,専門性をもつ人材へのニーズは高まっている.その実践と研究は幅広い領域と関連があり,とりわけ成人精神医学とは緊密な連続性がある.国内でも児童精神医学の教育研修のシステムが構築されつつあるが,成人精神医学との連携のあり方は検討を要する.本稿では,国内外の児童精神医学の教育研修システムの動向を概観した.欧米の標準的な児童精神医学の教育研修システムとして,九州大学病院子どものこころの診療部が研修の内容や方法の開発において提携を行っている英国のモズレー病院の児童精神医学ディプローマ・コース(現マスター・コース)の研修プログラムの内容を検討した.さらに研修コース開設時の構想について教育研修担当者へ聞き取りを行い,特に成人精神医学との連続性の観点から教育研修のあり方について検討した.英国のディプローマ・コースは多職種を対象としており,研修の前提として高度な精神医学の専門知識を要しない内容となっていた.一方国内では,精神医学のサブスペシャリティーとしての児童精神医学研修システムが構想・実践されており,より専門性の高い知識とスキルを前提にきめ細かく実践的な研修プログラムの構築が目指されていた.ディプローマ・コースの教育研修担当者からは,児童精神医学の専門研修に特徴的で重要な領域として発達学が挙げられた.国際的にも児童精神医学と成人精神医学をつなぐ領域として発達精神病理学や発達脳科学の分野で新たなパラダイムとエビデンスが蓄積されており,これらに対応して児童・成人双方の教育研修内容を改訂する必要性が指摘された.児童と成人の双方の領域での臨床実践におけるキャリーオーバーと人材育成のプロセスの共有を考慮すると,英国のような臨床サービスの均てん化を目指し研修目標を基本的なレベルにおいた均質性と統合性をもったプログラムも有効なモデルとなりうると考えられた.

索引用語:児童精神医学, 人材育成, 教育研修システム, サブスペシャリティー, キャリーオーバー>
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