Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第116巻第5号

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特集 認知症診療システムの構築と精神医学の貢献
認知症の地域生活のための循環型医療介護連携システムへ向けて
石井 知行
医療法人社団知仁会メープルヒル病院
精神神経学雑誌 116: 401-409, 2014

 平成24年,「今後の認知症施策の方向性について」(以下,「方向性について」という)および「認知症施策推進5カ年計画(オレンジプラン)」が厚生労働省より発表された.ここにおいて,精神科病院への長期入院を不適切なケアの流れの結果として,長期入院解消の施策として入院期間の目標値を設定している.本稿では,「方向性について」の施策の不合理について述べ,精神科認知症入院機能を列挙した.認知症入院医療が地域生活をサポートし,地域包括ケアに貢献するためには,病棟機能分化が必要である.認知症入院病棟機能分化の私案を以下に示す.①認知症急性期治療病棟.②認知症治療病棟.③最重度認知症療養病棟.④身体-精神合併症認知症対応病棟.入院機能がほかの社会資源と有効に連携するために,認知症地域連携パスの発展が重要である.「方向性について」の施策は科学的根拠が薄弱であるが,政策立案は統計学的にデザインされた調査研究に基づいたデータを根拠として,検証可能な形で行われた解析に基づいて行うことが重要である.非科学的政策立案の失敗例として,精神科病床7万2千床削減問題,少子高齢化・人口減少の主たる要因としての政府による産児制限を挙げた.科学的な根拠による予測なしに,認知症施策を立案する危険性を指摘し,地域ケアの限界の大きい諸条件下にあって,地域包括ケアシステムを現実化するために循環型医療介護連携システムを提言した.

索引用語:認知症入院病棟機能分化案, 循環型医療介護連携システム, 科学的政策立案のあり方>
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