本稿の目的は,最近アメリカ精神医学会によって改訂されたDSM-5のADHDの診断について討論をすることである.DSM-IV-TRのADHD診断にはいくつかの概念的な問題点があり,DSM-5の改訂に伴い修正されることが期待されていた.しかし,改訂された内容は多くの精神科医によって好意的には受け止められなかった.大きな懸念は,診断の全体的な構造と,下位分類や特定用語のあり方,診断に必要な項目数における不注意症状と多動衝動性症状の比率のアンバランス,発症年齢,ASDの除外の問題などが挙げられた.しかしこれらの問題は解決されないまま,議論が続いている.一方,過去10年以上に及ぶ研究や臨床のエキスパートガイドラインなどに基づいてADHDの診断や治療は明確なものになってきつつある.本稿では最新のエビデンスに基づいた成人ADHDの診断・評価法について概説する.
DSM-5と成人期ADHDの適正診断について
北海道大学大学院医学研究科児童思春期精神医学講座
精神神経学雑誌
117:
756-762, 2015
<索引用語:成人, 注意欠如・多動症, 診断, 過剰診断>