Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第123巻第7号

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特集 日常精神科臨床で遭遇する対処困難な過眠の見立てと対応
中枢性と症候性過眠症―症候性ナルコレプシーと過眠症をきたす疾患について―
神林 崇1)2), 今西 彩3), 大森 佑貴4), 富永 杜絵1), 千葉 滋1)2), 吉沢 和久3), 入鹿山 容子1), 小野 太輔5), 筒井 幸3), 石戸 秀明1), 韓 庫銀1), 木村 昌由美1), 近藤 英明1)6)
1)筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構
2)茨城県立こころの医療センター
3)秋田大学医学部附属病院精神科学教室
4)東京都健康長寿医療センター
5)スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所
6)茨城県立睡眠医療クリニック
精神神経学雑誌 123: 405-416, 2021

 過眠症とは,本来起きて活動している時間帯に過剰な眠気が生じ,居眠りを繰り返してしまう疾患の総称である.中枢性過眠症や睡眠時無呼吸症候群などが含まれるが,睡眠時無呼吸症候群は熟眠障害による二次性の過眠症と考えられる.DSM-5では,「日中の過度の眠気」に加えて,9時間以上の夜間睡眠の延長も過眠障害として,「夜間睡眠時間の延長」と定義している.中枢性過眠症にはナルコレプシー,特発性過眠症,反復性過眠症が含まれる.本態性ナルコレプシーの機序はオレキシン神経系の脱落によるが,症候性による病態もあり,遺伝性,脳腫瘍,脱髄性疾患,変性疾患,頭部外傷,傍腫瘍性神経症候群などで認められる.多くの症例で視床下部病変を伴っており,視神経脊髄炎が最多である.症候性ナルコレプシーに関しては,睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)から過眠症状とオレキシン値の低下の存在で診断できることになった.症候性ナルコレプシーのなかでも,抗Ma-2抗体や視神経脊髄炎の原因となる抗AQP4抗体による免疫系が関与する機序が近年明らかになった.一方で視床梗塞において観察される過眠症状はオレキシン神経障害が関与しないと考えられる.本態性ナルコレプシーの場合は対症療法のみとなるが,症候性の場合は,原疾患の治療(ステロイドパルス療法など)ができれば過眠症状も改善することがわかってきている.また本態性ナルコレプシーにおいても受容体は保存されているため,オレキシン補充やアゴニスト療法は新しい治療法としての選択肢となると考えられる.オレキシン測定は最適な治療法選択のために今後とも非常に重要な指標と思われる.

索引用語:オレキシン, ナルコレプシー, 過眠症, 抗AQP4抗体, 視神経脊髄炎>
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