Advertisement第121回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第122巻第2号

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資料
責任能力が争点となった死刑求刑事件(大量殺人のケース)の判決文調査―重大事件における精神鑑定と責任能力判断の変遷―
柏木 宏子, 山下 真吾, 平林 直次
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
精神神経学雑誌 122: 118-134, 2020
受理日:2019年10月13日

 著者らは,ある死刑事件の精神鑑定を担当したことをきっかけに,過去の死刑求刑事件で責任能力が争点となった事件の判決文を調査した.1980年1月1日から2019年2月28日までの期間で,被害者(死亡者)が3名以上で家族以外であり,幻覚や妄想といった精神病性症状が犯行に関連したと判決で認められた事例11例について詳細を検討した.この結果,以前は心神耗弱が認められ死刑が回避されて無期懲役となっていたが,最近の判決では心神耗弱や心神喪失,情状酌量による減刑が認められにくくなっており,完全責任能力での死刑判決が連続していた.以前の判決では,動機に精神障害による妄想などの影響があれば,弁識能力・行動制御能力が著しく障害されていた疑いが残るとして,心神耗弱の判断がされていたが,最近は,動機には精神障害が影響したが,犯行自体は正常心理に基づいているとするなど,「動機」と「犯行自体」を切り離して考察した死刑判決が続いていた.また,以前の判決では犯行後の診察結果なども重視され,統合失調症との診断自体の影響が大きく,不可知論(診断を下した時点で判断を停止し,慣例に基づいて責任能力の結論を導く立場)の影響が残っていたと推察されたが,最近では,精神障害と正常部分とが犯行に与えた影響・メカニズムを詳細に分析する可知論の傾向が強まった.そのうえで正常な部分が強調されやすくなり,完全責任能力に傾く傾向が見て取れた.背景には可知論への変化(1984年~)や7つの着眼点(責任能力に関して法律家から質問されることが多い項目をまとめたもの)の普及(2006年~),被害者参加制度(2008年),裁判員裁判(2009年)の開始,厳罰化の流れ,精神障害者のノーマライゼーション化などがあると考えられた.死亡者が多く,家族以外が被害者であるなど社会的影響が大きいと,心神耗弱や心神喪失が認められにくく,死刑判決が続いている.最後に,診断を超えて,ケースフォーミュレーションにより視覚的に病気の部分やその他の要因の犯行への影響をわかりやすく図示することや,ライフチャートにより鑑定の科学性と透明性を高めることを提案した.

索引用語:精神鑑定, 死刑, 不可知論, 責任能力, 裁判員裁判>

はじめに
 著者らは,精神鑑定ならびに鑑定人尋問を引き受けたある事件の裁判員裁判で,被告人に死刑判決が下ったことをきっかけに,過去の死刑求刑事件で責任能力が争点となった事件の判決文を調査した.その結果,被害者(死亡者)が3名以上で家族以外の場合には,最近では犯行の動機に妄想などの精神病性症状が影響をしている場合にも,心神耗弱や心神喪失,情状酌量による減刑が認められにくくなっており,死刑判決が続いているのではないかとの疑問をもつに至った13).また,その要因についても考察した.
 世界的には142ヵ国が死刑を用いていないため,日本を含む死刑存置国は少数であるが1),死刑判決後の処遇,死刑の受刑能力評価,死刑執行方法,死刑自体については,世界的にもその倫理的問題についての議論は多く存在する.国連人権委員会が死刑廃止を求めていることはもとより23),学会声明,国際的に著名な医学雑誌での報告や意見表明も多くみられる3-5)11)15)17)18)22).世界医師会は,「医師が,どのような方法においても,または死刑執行手続きのどの段階にあっても死刑に関与することは倫理に反する」と声明を出しており25),世界精神医学会はマドリッド宣言で,「いかなる状況下にあっても,精神科医は法的に認可された処刑や,死刑執行のための能力評価に関与すべきではない」としている26).また,Lancetは2009年,日本が精神障害者を処刑していることについて批判する記事を書いている6).一方,死刑判決前の精神科医のかかわり,すなわち死刑求刑事件の責任能力鑑定については学会声明や医学雑誌などによる報告,意見表明は著者が調べた範囲ではほとんど存在しない.
 なお,本資料論文の一部は,Frontiers in PsychiatryのPerspective論文に,日本における死刑と精神鑑定の総論の一部として報告している13).また,第15回日本司法精神医学会大会(2019年6月7日)においても一部を報告した.

I.方法
 主に,TKCローライブラリーのオンラインサービスによって提供される裁判所の判例に基づいて事件を収集した.TKCローライブラリーは,判例をデータベースに集積し,学術的な利用のために判決を有償で提供している.判決文は,著作権法13条の著作権の対象とはならないが,判決文を引用するために,同社から書面による承諾を得た.さらに,判決文を引用するにあたり,LEX/DBのデータベースのレファレンス番号を付した.
 1980年1月1日から2019年2月28日までの期間を設定し,「死刑」「責任能力」と入力して検索し,被害者(死亡者)が3名以上で,幻覚や妄想などの精神病性症状が犯行に関連したと判決で認められた事例を抽出し,詳細を検討した.
 ただし,検察官が起訴しなかったものや,死刑を求刑していないものは含まれておらず,責任能力鑑定が行われなかった事件も存在すると考えられ,すべて網羅できていない可能性がある点に留意する必要があり,この点が本調査の限界である.
 本資料論文は判決文のみを調査対象としていることから,「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」第3「適用範囲」1「適用される研究」の項の適用範囲の例外規定である,ウ①「すでに学術的な価値が定まり,研究用として広く利用され,かつ,一般的に入手可能な資料・情報」に該当すると考えられる.しかしながら,日本精神神経学会の「症例報告を含む医学論文及び学会発表におけるプライバシー保護に関するガイドライン」および「ガイドラインQ & A」,日本医学会連合の「各学会活動における個人情報の取り扱いと配慮について」に準じて,研究対象のプライバシー保護の観点から,事件日,裁判所名,判決日を一部省略し,論旨に影響のない範囲で事件の概要や動機を簡略化するなどの配慮を行った.

II.結果
 TKCローライブラリーにて,1980年1月1日から2019年2月28日までの期間を設定し,「死刑」「責任能力」と入力して検索した結果,238件が該当し,そのなかで,単独犯で,被害者(死亡者)が3名以上の事件が33件みられた.そのうち,家族が被害者の事件3件は除いた.この,家族が被害者である3件〔被害者(死亡者)の数はそれぞれ,4名,3名,5名〕はいずれも死刑は回避され,無期懲役であった(地判昭和63年LDX/DB25402780,地判平成8年LDX/DB28025011,地判平成21年LDX/DB25440492).残った30例のなかで,判決において,幻覚や妄想などの精神病性症状が犯行に関連していると認められたもの11例を抽出した.その11例の,動機,診断,精神障害と犯行との関連,責任能力判断の根拠などの詳細について表1にまとめた.灰色の部分には,新しい法律や制度の開始,最高裁決定,歴史上の事件についての年表を記載した.なお,最後の3件の事件については本稿執筆時点で上告・控訴中であり,今後判決が覆る可能性がある.表1に示す通り,1982年から2006年までは心神耗弱が認められ死刑が回避されて無期懲役となっている一方で,2010年以降は,心神喪失・心神耗弱や情状酌量による減刑が認められにくくなっており,完全責任能力での死刑判決が連続していた.

表1画像拡大

III.考察
 被害者が家族以外の第三者で3名以上の場合,1980年代には犯行動機に精神障害による妄想などの影響があれば,心神耗弱の判断がされ,死刑が回避されていた.近年は「動機」と「犯行」を切り離し,動機に幻覚妄想の影響があったとしても,犯行自体は正常心理で説明可能と結論づけたり,精神障害とそれ以外の正常な部分が犯行に与えた影響を分析することで,正常な部分が強調されることにより,完全責任能力に傾く傾向がみられた.
 1983年の最高裁決定において,「被告人の精神状態が刑法39条にいう心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であって専ら裁判所に委ねられるべき問題であることはもとより,その前提となる生物学的,心理学的要素についても,右法律判断との関係で究極的には裁判所の評価に委ねられるべき問題である」(最決昭和58年9月13日刑集232号95頁)とされ,1984年には最高裁の決定で,不可知論から可知論の流れを作った判決が出された.不可知論というのは,精神障害が犯行に与えた影響のメカニズムはわかりえないという考え方で,統合失調症の診断があれば責任能力は減弱の方向に傾くといった傾向がみられていたが,この1984年の判決で,「被告人が犯行当時精神分裂病に罹患していたからといつて,そのことだけで直ちに被告人が心神喪失の状態にあつたとされるものではなく,その責任能力の有無・程度は,被告人の犯行当時の病状,犯行前の生活状態,犯行の動機・態様等を総合して判定すべきである」(最決昭和59年7月3日刑集38巻8号2783頁)とされ,可知論へ大きく舵を切った.2006年以降は「7つの着眼点」が普及するようになった.この「7つの着眼点」は,法律家から精神鑑定医に質問されることが多い項目をまとめたもので,鑑定人尋問に備えてあらかじめ理論を組み立てておくために整理されたものである.「7つの着眼点」のなかには,①動機の了解可能性/了解不能性,②犯行の計画性,突発性,偶発性,衝動性,③行為の意味・性質,反道徳性,違法性の認識,④精神障害による免責の可能性の認識,⑤元来ないし平素の人格に対する犯行の異質性/親和性,⑥犯行の一貫性・合目的性/非一貫性・非合目的性,⑦犯行後の自己防御・危機回避行動,の7項目が含まれており21),本来は精神鑑定医の専門外とされる要素も含まれている.例えば,妄想に支配された犯行であっても,犯行の遂行のためには合目的性が必ず見いだされるが,精神鑑定医が了解可能性や合目的性,計画性などを過剰に評価した説明を法曹に提供したとすると,ほとんどすべての事件で能力が保たれていたことになってしまう.このような批判から,当初は精神鑑定書作成の手引きでは,7つの着眼点を使用することは,精神鑑定医に対して「推奨」という位置づけであったが,現在は「参考」程度に用いるようにとされており,「基準」のように扱われるべきものではなく,「視点」として挙げるものであるとされている21).また,2008年には,「生物学的要素である精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度については,その診断が臨床精神医学の本分であることにかんがみれば,専門家たる精神医学者の意見が鑑定等として証拠となっている場合には,鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり,鑑定の前提条件に問題があったりするなど,これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り,その意見を十分に尊重して認定すべきものというべきである」(最決平成20年4月25日刑集62巻5号1559頁)とされた.2009年には,最高裁決定で,「裁判所は,特定の精神鑑定の意見の一部を採用した場合においても,責任能力の有無・程度について,当該意見の他の部分に拘束されることなく,被告人の犯行当時の病状,犯行前の生活状態,犯行の動機・態様等を総合して判定することができる」(最決平成21年12月8日刑集63巻11号2829頁)とされた.まとめると,現在では,基本的には鑑定人の意見を尊重しつつも,責任能力の判断は専ら裁判所に委ねられ,裁判所は精神鑑定の意見の一部を採用したとしても,他の部分には拘束されずに,犯行当時の病状,犯行前の生活状態,犯行の動機・態様等を総合して判定できる(可知論),という考え方が採用されている.その他,2008年には被害者参加制度,2009年からは裁判員裁判が開始された.

1.「動機」と「犯行自体」を切り離して考察している判決文の増加
 ①1982年(地判)の事件(以下,表1参照)においては,犯行の計画性や合目的性,犯行の反道徳性の認識,人格が保たれており,自己の行動を選択できる力が残されていたなどと認定されつつも,心因性妄想に覚せい剤の影響が加わって生じた幻覚妄想状態による精神障害と診断され,幻覚・妄想は,本件犯行の動機の形成に重要な役割を果たした点において,事理を弁識しこれに従って行為する能力を著しく制約していたとして,心神耗弱の判断となっている.④1984年(地判)の事件においても,本件犯行の動機は,世間一般に対する憤まんを晴らそうとしたことにあって,自己を追跡し迫害する社会福祉機関に対する怒りに基づき直接これに反撃しようとしたことにあるわけではないこと,本件犯行およびその前後を通じて,諸種の複雑な行動を的確に遂行していることなどが認定されつつも,被害・追跡妄想という精神障害と本件犯行の動機形成との間には本質的に重要な関連性があると考えられ,情動興奮は,酒の酔いが手伝って一気に昂じ,精神的成熟に劣る被告人に強度の影響を与え,その影響を受けて本件犯行に及んだのであって,当時,是非善悪を弁識し,それに従って行為する能力が著しく低下していたとして,心神耗弱としている.⑤1984年(高判)の事件においても,完全に妄想に支配されていたとまではみられないと認めつつも,被害・迫害妄想に起因するものであるとされ,犯行当時,自己の行為の規範的意味を理解し,その理解に従って自己の行動を制御する能力は著しく減弱した状態であったと認め,心神耗弱の判断となっている.
 このように,1980年代の判決では,幻覚や妄想が動機の形成に重要な役割を果たしていれば,心神耗弱とされていたことがうかがえる.
 一方,これらの判決と対照的に,⑦2010年(地判)のパチンコ店放火事件においては,確かに,本件犯行の端緒は,精神疾患によってもたらされたものであり,このような思考に陥ったことには精神疾患が影響していると,覚せい剤精神病と犯行との関連を認めているものの,「恨みを晴らすか,また,どのような形で晴らすかということは,被告人が自ら判断して決めたことであり,被告人は,あらゆる利害得失を考えた上,最終的に本件犯行に及ぶことを選択したのである」とし,完全責任能力を認めている.⑨2016年(高判)の事件においても,「本件妄想は犯行動機の形成過程には影響しているが,報復するか,どのような方法により報復するかは,被告人が元来の人格に基づいて選択した」「報復の程度についての価値観は,妄想性障害(病気)により決まるものではなく,それぞれの個人により決まるものである」とされ,完全責任能力が認められている.このように,動機形成過程には精神障害が影響しているとしながらも,恨みを晴らすか,どのような形で晴らすか,報復をするか,報復の程度はその人の人格や個人の価値観により決まる,とされている.さらに,⑩2017年(地判)の事件においては,犯行の動機の前提となる被害者一家らが工作員であり,被告人が攻撃を受けているという認識は妄想であり,そこには薬剤性精神病の影響があると認めつつも,「そこから殺害という手段に出ることを決意した思考過程においては,被告人の世界観を前提とする誇大感,正義感,被害者一家らに対する悪感情など被告人自身の正常な心理が作用しており,病気の影響は小さい」とされ,完全責任能力を認めている.さらに,⑪2018年(地判)の事件については,「本件各妄想の存在がなければ,そもそも被告人が所持金を失って追い詰められることも,ひいては犯罪行為によってでも金品を得ようと決意することもなかったのであり,精神障害が各犯行の犯意形成に影響を与えたとする見方は確かに可能である」としながらも,「被害者らを本件各妄想に基づく追跡者とみなして殺害した可能性は排斥でき,金品入手の目的をより確実に達するために家人に抵抗されぬよう殺害し,あるいは強盗の機会に人を殺害したものと認められるが,いずれも精神障害による病的体験の存在を介さずとも犯罪者の正常心理として了解可能なものといえる」として,完全責任能力を認めている.
 このように2010年以降の最近の判決文を読むと,動機の形成過程には妄想が影響しているけれども,犯行自体は被告人自身の正常な心理に基づくものであったとされている点で,「動機」と「犯行自体」を切り離して考察している文章が散見される.以前は,動機に精神障害による妄想などの影響があれば,弁識能力・行動制御能力が著しく障害されていた疑いが残るとして,心神耗弱の判断がされていた.しかし,最近は,動機形成には精神障害が影響したけれども,犯行自体は,人格の影響や価値観に基づいているとされることや,報復の程度は個人による,生命に対する差し迫った危機感を生じさせるものではなく,他に選択肢があった,などの理由で,犯行自体は正常な心理に基づくものであったとの判決がみられており,心神耗弱や心神喪失が認められにくくなっているのではないかと思われる.なお,著者は医療観察法病棟に勤務しているが,心神喪失や心神耗弱で不起訴ないし起訴猶予,無罪などになり医療観察法病棟に入院となった者の精神鑑定書を読んでいると,上記のような責任能力の判断の仕方が一般的であるということはない.この,責任能力判断が時代や事件の社会的影響の大きさによって変化しうることの矛盾については,以下の2009年の判決文によって部分的には納得せざるを得ない.「責任能力は,その実質が犯人に対する非難可能性にあるところ,この非難可能性については,共同社会に身を置くべき以上,その秩序維持という観点からも,共同社会あるいは一般人の納得性を考えて,規範的にとらえるべきものである,したがって,それを固定的,絶対的なものとしてとらえるのは相当ではなく,時代の推移,社会の流れの中で変容する可能性のあるものと考えるべきであり,(略)裁判員制度下において,責任能力についても裁判員の意見を求める意義はこの点に存する」(東京高判平成21・5・25LDX/DB25451513).そうすると,社会的影響の大きい事件では,精神鑑定の影響や意義が相対的に減じることをわれわれは受け入れざるを得ないのだろうか.

2.不可知論から可知論への流れが死刑求刑事件の判決に与えた影響
 ②1983年(高判)の事件では,被告人は良好な寛解状態にあったとされるとともに,本件は直接幻覚,幻聴,妄想,作為体験に基づく犯行ではない,と判断されながら,総合的に判断して心神耗弱となっている.この鑑定と判決で特徴的なのは,犯行当時は寛解状態とされながらも,犯行後に行われた鑑定の診察結果と診断が重視されていることである.現在では,犯行後の精神状態は,拘禁反応などの犯行当時にはみられない症状により修飾される可能性があることから,慎重に評価する傾向がある.ところが,当時は,統合失調症との診断が重視され,寛解状態であっても心神耗弱との判断がされるなど,不可知論の傾向がみられる.⑤1984年(高判)の事件においても,一方の鑑定では,人格の崩れが非常に軽く,温和な環境では温和で常識的対応をし,幻覚がなく,思路の障害もほとんどなく,表面的・形式的には日常生活の乱れが顕著でないようにみえ,精神障害者の犯罪の有責性についても言及しているとされている.しかし,他方の鑑定の診察場面での言動から,単一型の統合失調症との診断が採用され,生活の広い分野においてはなお正常な精神状態が支配していたようにうかがわれる,としながらも,心神耗弱と判断されている.
 このように,1980年代は,犯行後の診察結果なども重視され,統合失調症の診断自体の影響が大きく,不可知論の影響が残っていたと推察される.それとは対照的に,先述のように最近では,精神障害と正常部分とが犯行に与えた影響・メカニズムを詳細に分析する可知論の傾向が強まったうえで,正常な部分が強調されやすくなり,完全責任能力に傾く傾向が見て取れる13)
 なお,今回の検討では事例数が11例と少なく,症例の診断も多様であることから,責任能力に関する考え方の変化を結論づけることには慎重である必要がある.この点は本資料論文の調査の限界である.

3.その他
1)被害者(死亡者)数と死刑判決との関連
 死刑が求刑され,完全責任能力が認められたものの,死刑が回避され,無期懲役の判決となった事件も存在する.事件の概要は白昼の繁華街で2名を無差別に刺して殺害したものである.診断は覚せい剤中毒後遺症であった.動機については,仕事もなく親族からも疎外され,服薬も中断していたなか,自殺しようと思ったが死にきれず死刑になろうと思っていたところ,「刺しちゃえ」という幻聴が聞こえてきたというものである.背景には体系化された誇大妄想があった.一審では完全責任能力で死刑となったが,2017年の控訴審では,完全責任能力は維持されたものの,死刑を回避し,無期懲役となった.死刑を回避した判決理由に,計画性が低く,精神障害の影響があること,被害者が2名であること,反省していること,が挙げられていた(高判平成29年LEX/DB25448570).
 被害者数と死刑判決の関係については,最高裁判所司法研修所の研究報告によると,1970年から2009年までに死刑が求刑され,死刑か無期懲役が確定した346件(死刑193件,無期懲役153件)のうち,死刑が確定した割合は,被害者が1人死亡の場合は32%,2人だと59%,3人以上が79%であった.研究者らは,「被害者数と死刑判決との間には,強い相関関係が認められる」と結論づけた19)
2)被害者の類型と死刑判決との関連
 先述したように,1980年1月1日から2019年2月28日における,3名以上を殺害した事件で,家族が被害者であった3件はいずれも死刑は回避され,無期懲役となっていた.いずれも,完全責任能力が認められたが,情状酌量により死刑が回避されている.
 日本では,触法精神障害者に専門的な治療を提供するための法律である医療観察法が2005年より施行され,2018年現在,全国に指定入院施設として33病棟,833床が整備され,指定通院施設は601病院(診療所含む)整備されている14).医療観察法では,殺人,傷害,放火,強盗,強制性交,強制わいせつといった重大な他害行為を行った者で,犯行当時,精神障害により心神喪失ないし心神耗弱の状態であったと判断され,不起訴ないし起訴猶予,無罪ないし執行猶予付き判決となった者に対し,検察官が医療観察法の申立てを行うことで,精神科の強制治療の対象となる道が開かれる13).法務省による犯罪白書の統計によると,2016年に検察官が医療観察法の申立てを行ったのは350件(不起訴とされたのが313件,無罪が3件,執行猶予付き判決が34件)で,そのうち,医療観察法の入院決定が238件,通院決定が36件であった9).このように,医療観察法処遇となったケースは,多くの場合,検察捜査の段階で精神鑑定が行われ,不起訴となっている.なお,2016年の殺人の検挙人員総数は816人で,そのうち精神障害者またはその疑いのある者は121人8),そのうち,96人が検察官により医療観察法の申し立てがなされ(87人は不起訴,1人は無罪,8人は執行猶予付き判決),そのうち69人が医療観察法の入院決定,10人が医療観察法通院決定となった9).この法のもと,これまでに多くの統合失調症や妄想性障害などの精神障害に罹患している触法精神障害者が治療を受け社会復帰している.なお,日本で初めて開棟されて13年になる,著者らが勤務している医療観察法病棟(66床)に入院となったケースのなかで,2名以上殺害したケースが7ケースあったが,7ケース中6ケースは,被害者が家族であった.残りの1ケースはグループホームへの放火で,グループホームの入所者が被害者であった.
3)厳罰化の流れと世論調査にみる文化的背景
 厳罰化の流れも指摘されている20).世論調査で死刑は廃止すべきとした国民の割合は,1975年の20.7%をピークに減少し続け,2009年には5.7%となっている20).この背景には1988年から1995年の一連のオウム真理教事件があると指摘されている20)
 また,このように日本で精神障害者に対する死刑判決が続いている背景には,精神障害者のノーマライゼーション化に加えて,2008年に導入された被害者参加制度や2009年から施行された裁判員裁判が影響している可能性がある13).日本の特徴として,反省の有無と被害者遺族感情が重要視される文化的背景があることが指摘されている10).2014年の内閣府による世論調査では,「死刑もやむを得ない」と容認したのは80.3%,「死刑は廃止すべきである」と否定したのは9.7%であった16).死刑容認の理由(複数回答)は「被害者や家族の気持ちがおさまらない」が53.4%で最も多く,次いで「凶悪犯罪は命をもって償うべきだ」(52.9%),「生かしておくとまた同じような犯罪を犯す危険がある」(47.4%)の順で多かった16).精神障害者の場合,妄想や思考障害のため反省が困難であったり,知的障害や自閉スペクトラム症の病理として状況の理解や相手の気持ちを想像することが困難で,裁判において謝罪や反省を述べることが難しく,更生可能性がないと判断されやすいことに加えて,さらに被害者遺族感情を傷つける結果となり,それが裁判員の判断に影響を与える可能性がある13).裁判員裁判では,被害者参加制度も導入されている.表1の⑩2017年(地判)の事件の「その他」に記載しているが,「被告人は,法廷において,被害者らに対し一度も謝罪の言葉を述べていないばかりか,未だにテロリストと呼ぶなど侮辱し,自己の犯行を『天誅』などと言って正当化し続けるなど,全く反省していない.被告人に前科はないものの,更生可能性は乏しいといわざるを得ない.そして,このような被告人の態度に加え,前記のような凄惨な犯行態様により家族の命が奪われたことからすれば,被害者遺族らの悲しみ,怒りは察するに余りあり,極めて峻烈な処罰感情をもって,被告人に対して極刑を求めているのも当然といえる」と判決文にある.精神科医の立場からみると,被害妄想の影響から善悪の判断ができていないからこその発言と考えるのが自然だが,判決ではかえって量刑を重くする方向に働いたと考えられる.このように反省の有無や被害者遺族感情を重視する日本の文化の影響も無視できないのではないだろうか13).これは,裁判員裁判でのプレゼンテーションの難しさにもつながる.
4)裁判員裁判でのプレゼンテーションの難しさ
 被害者(死亡者)が3名以上かつ家族以外である場合など,社会的影響が大きい事件では,精神障害の影響があっても心神耗弱や心神喪失が認められにくくなっている現状と,反省の有無や被害者遺族感情を重視する文化的背景があるなかで,精神鑑定医が裁判員裁判でプレゼンテーションを行うことには多くの困難が伴う13).裁判員に,精神障害(いかに病気か)をイメージしてもらうことの難しさや,精神障害と犯行との関係の難解なメカニズムを理解してもらうことの難しさである13).裁判員にとって治療や社会復帰に対するイメージがもちにくい場合がほとんどだろう.精神鑑定医側の問題としては,「平素の人格で説明がつく」「犯行自体は正常な心理に基づく」といった表現がひとり歩きしてしまうことの危険性がある.

IV.展望
 精神科医につきつけられた課題を整理する.①死刑事件の精神鑑定に関与することの倫理的問題,②「動機」と「犯行自体」とを切り離して考察した判決(精神鑑定結果),③診断の一貫性のなさ,④裁判員に,精神障害,治療と社会復帰の重要性を理解してもらうことの難しさ,⑤判決文で治療可能性や社会復帰(更生)の合理的な可能性がふれられていない,⑥被告人の法廷での言動についての説明の難しさ(被害妄想,思考障害,自閉スペクトラム症,知的障害などの影響から,反省・謝罪が困難,被害者・遺族の感情をさらに傷つける言動がみられることがある)を課題として挙げた.以下はその課題に対する著者らなりの解決策の提案や希望である.
 ①死刑囚の受刑能力や処遇,死刑執行に関する倫理的問題については世界的にも声明や報告がみられるが,死刑事件の裁判における精神科医の役割・倫理的問題についての報告は少ない.精神科医が死刑事件の精神鑑定に関与しないと,治療が必要な精神障害者に不利益が生じうるため,死刑事件であっても精神鑑定をすること自体は許されるものと考える.ただし,被告人に死刑判決が下された後に生じる倫理的問題,鑑定結果・可知論・7つの着眼点,その他の使用する理論やモデルなどの負の影響については常に自覚しておく必要がある.診断方法・鑑定の方法の変化などが,直接的ではなくとも死刑判決の出やすさなどに影響しうることも自覚しておきたい.
 ②最近では,「動機」と「犯行自体」を切り離して考察し,精神障害が動機には影響したが,「犯行自体は正常な心理に基づく」との判決が散見される.統合失調症などの精神障害とその他に影響した要因とのバランスのよい描写やわかりやすい図示によって,言葉のひとり歩きを防ぐことができ,より合理的な判断に貢献できる可能性がある.はケースフォーミュレーションの一例である7).このように,視覚的に統合失調症の影響と,それ以外の要因の影響とがわかるようにケースフォーミュレーションを行うことが有効と思われる.また,ライフチャートによってこれらの分析の根拠となっていることを示すことで,より鑑定の科学性と透明性を高め,鑑定の質を高めることに貢献できる.表2はライフチャートの一例である7).大事なことは,主観的訴え(被疑者の供述)と客観的事実(他者の供述・行動観察)と精神鑑定医による評価を分けて記載することである7).これにより後から検証が可能になる.このようにライフチャートとそれに基づくケースフォーミュレーションを利用することは,犯行に対する精神障害の影響をわかりやすくする利点がある一方で,表面的な理解や特定要因の過大,または過少評価につながるリスクもあると考えられる.使用するツールや理論についてはその長所や危険性について認識しておく必要がある.さらに,専門家の個人的経験や理論は妥当性が高くないため,鑑定カンファレンスを行い,他の精神科医の意見を求めたり,事例検討会を繰り返すことが望まれる.
 ③診断の一貫性のなさについては,特に統合失調症と覚せい剤などの物質誘発性の精神病,妄想性障害とパーソナリティ障害,統合失調症と妄想性障害などの診断が医師間で分かれることがしばしばある.精神医学的診断は再現性が乏しく,いまだに科学的に確立したものではないということが根本的な問題である.十分ではないが,操作的診断基準を使用することに加えて,鑑定カンファレンスなどで他の精神科医と議論することも有益と考えられる.
 ④著者らは,治療反応性や社会復帰に至るロードマップなどについても踏み込んで説明すると,理解が得られ,イメージがされやすくなるのではないかと考えている.しかし,これには議論があり,治療について踏み込むと鑑定の公平性が失われるとの意見もある.しかしながら,治療成功例などについても,社会に発信していきたいと考えている.
 ⑤刑罰と同様,治療が必要な人には治療を提供すべきであるから,治療について,どういった可能性があり,何ができるのか,判決文でふれてほしい.また,更生や社会復帰に対するより合理的な予測因子についてふれてほしい.これまでの判決文では,反省の有無が更生可能性の唯一の予測因子のような記載が目立つが,これは前時代的ではなかろうか.最近は,過去の暴力の既往や物質使用の問題といった将来の暴力のリスク要因のみならず24),人生の目標や仕事,余暇活動,ソーシャルネットワーク,服薬,対処能力などの,将来の暴力リスクを低減させる本人のストレングスに着目した,暴力リスクの「保護要因」についても研究がなされている2)12)
 ⑥法廷での被告人の言動で,反省や謝罪ができず,周囲にマイナスの印象を与え,被害者・遺族をさらに傷つける傾向の背景となっている病理についても,裁判員・裁判官に理解を求めるべくわかりやすく説明をする技量を高めたい.

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おわりに
 2010年のパチンコ店放火事件頃から,動機には精神障害が影響したが,犯行自体は正常心理に基づいていたとするなど,「動機」と「犯行自体」を切り離して考察した死刑判決が続いている.背景には可知論への変化(1984年~)や7つの着眼点の普及(2006年~),被害者参加制度(2008年),裁判員裁判(2009年)の開始,厳罰化の流れ,精神障害者のノーマライゼーション化などがあると考えられた.死亡者が多く,家族以外が被害者であるなど社会的影響が大きいと,心神耗弱や心神喪失が認められにくく,死刑判決が続いている.最後に,診断を超えて,ケースフォーミュレーションにより視覚的に病気の部分やその他の要因の犯行への影響をわかりやすく図示することや,ライフチャートにより鑑定の科学性と透明性を高めることを提案した.

 なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない.

文献

1) Amnesty International: Death Sentences and Executions 2017 (https://www.amnesty.org/download/Documents/ACT5079552018ENGLISH.PDF) (参照2018-09-02)

2) de Vogel, V., de Rulter, C., Bouman, Y., et al.: SAPROF. Guidelines for the Assessment of Protective Factors for Violence Risk. English version. Forum Educatief, Utrecht. 2009 (https://www.saprof.com/japanese-saprof.html) (参照2019-03-09)〔柏木宏子, 児島正樹, 東本愛香ほか訳, 平林直次, 菊池安希子, 池田 学監訳: SAPROF (Structured Assessment of PROtective Factors for violence risk) 暴力リスクの保護要因評価ガイドライン第2版 日本語版. 2014〕

3) Dyer, O.: Two hour death in US execution is likely to lead to legal challenges. BMJ, 349; g4861, 2014
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4) Dyer, O.: Pfizer blocks sales of its drugs for executions. BMJ, 353; i2791, 2016
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5) Ending the death penalty. Lancet, 385 (9975); 1262, 2015

6) Execution of prisoners with mental illnesses in Japan. Lancet, 374 (9693); 852, 2009

7) 平林直次: 精神鑑定の課題と質向上に向けたアイデア―個人的経験から―. 臨床精神医学, 47 (11); 1319-1325, 2018

8) 法務省: 精神障害のある者による犯罪等―犯罪の動向―. 平成29年版犯罪白書 (http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/64/nfm/n64_2_4_10_1_0.html) (参照2018-09-02)

9) 法務省: 精神障害のある者による犯罪等―心神喪失者等医療観察制度―. 平成29年版犯罪白書 (http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/64/nfm/n64_2_4_10_3_1.html) (参照2018-09-02)

10) 井田 良, 太田達也編: いま死刑制度を考える 慶應義塾大学出版会, 東京, 2014

11) Joseph, A. E.: I certified deaths after judicial executions - and I believe capital punishment should be abolished. BMJ, 348; g3312, 2014
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12) Kashiwagi, H., Kikuchi, A., Koyama, M., et al.: Strength-based assessment for future violence risk: a retrospective validation study of the Structured Assessment of PROtective Factors for violence risk (SAPROF) Japanese version in forensic psychiatric inpatients. Ann Gen Psychiatry, 17 (5); 1-8, 2018

13) Kashiwagi, H., Hirabayashi, N.: Death penalty and psychiatric evaluation in Japan. Front Psychiatry, 9; 550, 2018
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14) 厚生労働省: 心神喪失者等医療観察法の医療機関等の状況 (http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sinsin/shikou.html) (参照2018-09-02)

15) Matthews, D., Wendler, S.: Ethical issues in the evaluation and treatment of death row inmates. Curr Opin Psychiatry, 19 (5); 518-521, 2006
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16) 内閣府大臣官房政府広報室: 平成26年度基本的法制度に関する世論調査―死刑制度に対する意識― (https://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-houseido/2-2.html) (参照2018-09-02)

17) Reardon, S.: Science in court: Smart enough to die? Nature, 506 (7488); 284-286, 2014
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18) Sawicki, N. N.: Clinicians' involvement in capital punishment-constitutional implications. N Engl J Med, 371 (2); 103-105, 2014
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19) 司法研修所編: 裁判員裁判における量刑評議の在り方について 法曹会, 東京, p.108-109, 2012

20) 同書. p.135-137

21) 他害行為を行った者の責任能力鑑定に関する研究班編: 刑事責任能力に関する精神鑑定書作成の手引き. 平成18~20年度総括版 (ver. 4.0) 他害行為を行った精神障碍者の診断, 治療および社会復帰支援に関する研究 分担研究 他害行為を行った者の責任能力鑑定に関する研究 厚生労働科学研究費補助金 (こころの健康科学研究事業) (http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/shakai/jp/housystem/doc/tebiki40_100108.pdf) (参照2019-03-03)

22) Truog, R. D., Cohen, I. G., Rockoff, M. A.: Physicians, medical ethics, and execution by lethal injection. JAMA, 311 (23); 2375-2376, 2014
Medline

23) United Nations Human Rights Office of the High Commissioner: Death Penalty (https://www.ohchr.org/EN/Issues/DeathPenalty/Pages/DPIndex.aspx) (参照2019-03-03)

24) Webster, C. D., Douglas, K. S., Eaves, D., et al.: HCR-20. Assessing Risk for Violence, Version 2. Simon Fraser University and Forensic Psychiatric Services Commission of British Columbia, Burnaby, 1997

25) World Medical Association: WMA Resolution on Physician Participation in Capital Punishment. 2008 (https://www.wma.net/policies-post/wma-resolution-on-physician-participation-in-capital-punishment/) (参照2018-09-02)

26) World Psychiatric Association: Madrid Declaration on Ethical Standards for Psychiatric Practice (http://www.wpanet.org/current-madrid-declaration) (参照2019-03-04)

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