精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 461-467頁
竹内 秀暁,髙橋 英彦
 機械学習の技術を応用したアルゴリズムを用いて,少数の安静時脳機能的結合の相関値の加重線形和(WLS)により診断を予測するギャンブル障害(GD)の判別器の開発に取り組み,さらにWLSとGDの臨床尺度との関連について調査した.開発した判別器の独立したテストデータに対する判別性能はAUC = 0.81と良好であり,WLSとGD重症度及び罹病期間の間に相関関係は認められなかった.
 統合失調症と双極性障害の鑑別手法を開発するため,本研究では(ⅰ)両疾患における脳皮質下体積変化,(ⅱ)両疾患と知的機能障害間の因果関係,(ⅲ)両疾患を区分できる遺伝因子と知的機能の関連について検討した.両疾患の鑑別には,脳皮質下構造としては扁桃体体積が有用であること,認知機能が因果関係や遺伝学的にも有用であることを示唆している.
原著 | 476-485頁
堀井 清香,酒井 佳永,關 恵里子,有馬 秀晃,阿部 又一郎,秋山 剛
 TV通話による遠隔心理支援の特徴を明らかにするため,対面の心理支援と比較している国内論文を対象にスコーピングレビューを実施した.音声と映像がリアルタイムの同期型支援である等,選択基準を満たした論文5件について質的・記述的データの抽出と統合を行った.結果,TV通話による遠隔心理支援は,感情や雰囲気等も伝達可能であるという特徴等が見出された.
資料 | 486-497頁
宇野 晃人,田中 美歩,高橋 優輔,澤井 大和,熊倉 陽介,森島 遼,中島 直美,金原 明子,濱田 純子,小川 知子,田宗 秀隆,柳下 祥,池亀 天平,榊原 英輔,金生 由紀子,神出 誠一郎,笠井 清登
 22q11.2欠失症候群の表現型は個人差が大きく,定型的な支援がしばしば不十分である.本研究はアンケート調査の回答を混合研究法で解析し,疾患特性と福祉制度のミスマッチから生じる困難とニーズを検討した.量的解析から年齢に応じた困難の変化が,質的解析から本人と家族の心理的側面や具体的なニーズが示された.支援者の理解や知識の不足は両者に共通する結果だった.
21世紀の「精神医学の基本問題」―精神医学古典シリーズ― | 530-539頁
渡辺 哲夫
 Kraepelinは偉大な精神科医だが,四つの挫折を体験した.第一,疾患単位概念の「理念性」(Kant.Jaspers)を理解しない拙速な命名と混乱.第二,早発性痴呆と躁うつ病という人工的な二分法.第三,てんかん性精神病概念の定立そして「三大精神病学説」への挑戦と破綻.第四,症候群学説への跳躍と頓挫.だが現代精神医学はKraepelinの精神病二分法に依存している.

このウィンドウを閉じる

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology