精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 839-843頁
久島 周,今枝 美穂,田中 聡,加藤 秀一,大矢 友子,中杤 昌弘,アレクシッチ・ブランコ,尾崎 紀夫
神経性やせ症は治療法が未確立で死亡率が高く,その病因・病態は不明である.我々はゲノムコピー数バリアント(CNV)に着目した解析を実施し,1)神経発達症に関連するCNVが重症の摂食障害のリスクに関与すること,2)シナプス伝達の障害が病態に関与することが示唆された.今後のゲノム解析で遺伝要因が明確になり,病態の深い理解が期待される.
原著 | 844-859頁
山田 浩樹,徳増 卓宏,沖野 和麿,白井 將博,河合 恵太,石井 宏明,堀内 健太郎,幾瀬 大介,富岡 大,岩波 明,稲本 淳子
昭和大学横浜市北部病院の精神科救急病棟に入院した患者1696例において,緩下剤使用に関連する因子を検討した.添付文書上の上限を1とした場合の投与量の比を臨床用量比とし多変量解析に用いた結果,関連する因子は高齢,女性,入院回数,在棟日数,および抗パーキンソン薬,新規/従来型抗うつ薬,気分安定薬の臨床用量比であった.
特集 | 860-890頁
新井 久稔,日野 耕介,石井 貴男,久村 正樹
本特集では,「救命救急センターに搬送される自殺企図者に対する精神科医の役割」というテーマのもと,「自殺企図で搬送される急性薬物中毒患者の特徴と精神科医療の役割」,「救命救急センターを拠点とする自殺未遂者対応―近年の傾向およびCOVID-19流行がもたらした変化―」,「自殺企図で救命救急センターに搬送される重症患者の臨床的特徴と対応」,「精神科救急医療体制についての提案」について論じる.
精神医療奨励賞受賞講演 | 891-898頁
林 輝男
就労は当事者のパーソナルリカバリーにとって重要な営みである.われわれは,個別就労支援の一つ,IPSを2016年より導入し,従来型支援の2倍以上となる約60%の利用者の一般就労を実現した.今後,どの町でも精神障害者が希望さえすれば,一般就労があたり前の目標として応援される体制が整えば,社会的包摂は間違いなく進むであろう.
21世紀の「精神医学の基本問題」―精神医学古典シリーズ― | 899-909頁
鈴木 國文
Lacan理論を概観し今日の精神科医療に寄与する点を抽出した.「精神の不思議さの質」の相違に着目することが,統合失調症,神経症圏の病態,自閉スペクトラム症という三つの病理の相違を把握する上で欠かせないことを強調した.これらの考察を通して「シニフィアンの優位」「心因の二節性」「事後性」「対象a」などラカンの主要ないくつかの概念について解りやすく説明した.

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