精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 079-083頁
増田 慶一,岡田 剛,高村 真広,柴崎 千代,吉野 敦雄,横山 仁史,市川 奈穂,奥畑 志帆,小林 哲生,山脇 成人,岡本 泰昌
近年の拡散テンソル画像研究により,気分障害の白質統合性低下が一致した所見として示されている.本研究では,うつ病と双極性障害間の白質統合性を年齢効果を調整したうえで直接比較した.双極性障害ではうつ病,健常対照群に比較し,早期段階から左側脳梁体部,左側脳弓体部/柱部において白質統合性低下が生じている可能性が示唆された.
原著 | 084-090頁
稲熊 徳也,灘谷 聡昭,池本 正平,井藤 佳恵
統合失調症患者の麻痺性イレウスと向精神薬・下剤との関連を後方視的に調査した.2014年からの5年間に当院へ入院した統合失調症患者は3775名であり,そのうち25名が麻痺性イレウスに罹患した.ロジスティック回帰分析では,統合失調症患者の麻痺性イレウス発症にはclozapine,magnesium oxide,haloperidol,sennoside,年齢がそれぞれ独立に関連した.
DSM-5日本語版は,major depressive disorderの訳語を,それまでの「大うつ病性障害」から「うつ病」に改めた.その一方,日本の精神医学臨床では2000年頃まで,DSMと関係のない独自の伝統的な「うつ病」概念が生きていた.これをかぎ括弧なしでニッポンのうつ病と表記する.今回は,このニッポンのうつ病概念のこれまでとこれからを論じる.
特集 | 109-133頁
小椋 哲,長尾 喜一郎,岸本 泰士郎,木下 翔太郎
本特集では,「育精神科臨床におけるオンライン診療―保険診療3年目の現状と課題―」というテーマのもと,「精神科オンライン診療からみえる臨床風景―「影」からの報告と未来への展望―」,「遠隔診療,そしてオンライン診療の展望」,「オンライン診療,中央評価,遠隔モニタリング―種々の遠隔医療の今後の展開―」について論じる.
ICD-11は精神疾患とは別の章として「性の健康に関連する状態群」を新設し,そこに配置された性機能不全群および性疼痛症群を器質性疾患によるものを含む概念に変更した.ICD-10の性同一性障害は性別不合と改称されて本章に入り,脱精神病理化された.性別不合は当事者に対するスティグマを回避し,性別二元論を超えた多様な性のあり方の社会的受容を推進する概念となった.

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