精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

「全国の精神科医療施設における薬物関連障害実態調査」のデータを用いて,2012~2014年における危険ドラッグ(NPS)関連障害患者の臨床像変化を検討した.その結果,集中的に規制強化が行われたこの2年間に,依存症水準のNPS乱用者が増えるとともに,乱用者の社会的機能が低下したことを示す知見が得られ,わが国の供給断絶に偏った薬物対策の課題が示唆された.
総説 | 369-383頁
高橋 秀俊,神尾 陽子
本総説では,自閉スペクトラム症(ASD)の感覚の特徴について,臨床での影響や評価法,支援法などに関する既往の文献を概観し,今後の研究の方向性について論じる.非定型的な感覚の特徴は,ASDの研究デザインや臨床実践において考慮すべき重要な要素である.今後の研究は,ASDの病態解明に加え,有効な支援法に関しても新たな道を拓くであろう.
特集 | 384-415頁
渡邊 衡一郎,加藤 正樹,堀 輝,近藤 真前
本特集では,「治療抵抗性抑うつに対し外来診療でできること」というテーマのもと,「難治性うつ病―リスクと予測,診断の再考―」,「治療抵抗性抑うつに対し外来診療でできる薬物療法」,「外来治療レベルの治療抵抗性うつ病患者の復職に向けて精神科医が知っておきたいこと」,「一般外来におけるうつ病に対する対人関係療法」について論じる.
第113回日本精神神経学会学術総会 精神医学奨励賞受賞講演 | 416-420頁
齋藤 竹生
クロザピンは治療抵抗性統合失調症の治療において有用であるが,一方で重篤な副作用である無顆粒球症を引き起こす.そこで,われわれはクロザピン誘発性無顆粒球症に関連する遺伝的因子の同定を目的に,クロザピン誘発性無顆粒球症・顆粒球減少症の薬理ゲノム学研究を行い,無顆粒球症・顆粒球減少症の遺伝的リスクとしてHLA-B59:01を同定した.
第113回日本精神神経学会学術総会 精神医療奨励賞受賞講演 | 421-429頁
川室 優
1960年代前半より,精神障がい者の退院促進や病と暮らしの回復のために,上越地域の川室記念病院(旧名常心荘川室病院)での社会復帰活動を紹介する.1981年後病院付属つくし荘・通過型共同住居から移行型への居住支援の成果を上げた.1991年後つくしパン工房を拠点に,ひまわりオイル搾取等の就労支援と同時に子供や一般人との地域交流活動の重要性を唱えた.
連載 精神科多職種チームの協働 | 430-435頁
紫藤 昌彦
精神科診療所における多職種連携には院内連携と院外連携があるが,診療所の医師は院内外の多職種スタッフを調整するコーディネーターの役割を持つ.院外の多職種スタッフはさまざまな関係機関に所属しているが,診療所と関係機関との連携には院内精神保健福祉士の存在が不可欠である.診療所の医師は多職種の視点を取り入れ,診療所機能の向上を図っていく必要がある.
連載 精神科多職種チームの協働 | 436-444頁
堀川 公平,秋山 剛
本稿では,多職種によるチーム医療が活きる病院をめざすという方向性,流れを作り保つ心理的機制の重視,患者の改善がつなぎめなく進展できる病棟内機能分化,所属別,疾患・課題別の治療プログラムの組み合わせについて述べた.精神科病院における「治療的な共同体」の経験は,地域を「自分を支えてくれる共同体」として捉え参加していくための,貴重な礎になる.

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