精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 559-568頁
越川 陽介,西田 圭一郎,山根 倫也,吉村 匡史,斧原 藍,上田 紗津貴,石井 良平,木下 利彦,森島 陽介
大うつ病性障害(MDD)の認知的柔軟性は,前頭前野への経頭蓋直流刺激により改善されるかModified Wisconsin card sorting testを用いて検討した.MDD患者ではタスク・スイッチコストが増加したが,順行抑制のコストは健常者と同程度であった.また,背内側前頭前野が陽極のtDCSはMDD患者の反応時間を短縮させ,背外側前頭前野の場合は,タスク・スイッチコストを高めるが,順行抑制がない時は反応時間を短縮させた.
総説 | 569-578頁
曾根 大地,森本 悟,中島 振一郎,品川 俊一郎
中枢神経領域における疾患修飾治療(DMT)への機運の高まりは,レカネマブをはじめとして社会的なトピックとなっている.疾病の根本的な原因にアプローチするDMTは精神神経医学に革新をもたらし,新たな希望となるかもしれない.本稿では,昨年のシンポジウムを元に,てんかん,認知症,神経変性疾患,統合失調症等におけるDMTの現在地と可能性を議論する.
オーサーシップは研究への貢献を認めるクレジットであると同時に研究に対する責任を伴うものだが,不適切なオーサーシップ,特にhonorary authorshipが国際的にも高率に認められる現状にある.研究の公正性を守るために,研究機関における健全な研究文化の育成,学術誌の規程の明確化などによって,責任あるオーサーシップの促進が求められている.
21世紀の「精神医学の基本問題」―精神医学古典シリーズ― | 623-633頁
新宮 一成
Freudが始めた精神療法である精神分析は,想起を重んじることをもって成り立つ.想起は,治癒の袋小路となる反復強迫や妄想的転移を誘発しうるし,「事後性」という機制により発病にも関与している.それでも治癒を導くのは想起である.人を幼年期へと繋ぐ想起は,個としての人の内面の尊厳を護り,人の生活史の一回性を崇高なものとして立ち上げるからである.

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