精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 1001-1009頁
橋本 直樹
双極性障害患者,大うつ病性障害患者を対象に,金銭報酬遅延(MID)課題を用いた機能的MRI研究を実施したところ,抑うつ状態の重症度と脳賦活の関係について,右の脳幹と左の島前部で両群の間に傾向レベルの差を認めた.双極性障害と大うつ病性障害の間で,報酬系の脳賦活と抑うつ状態の関係に差がある可能性が示された.
総説 | 1010-1022頁
名越 泰秀,富永 敏行,酒井 美枝,舘野 歩
身体症状症の難治例では患者に合わせテーラーメイド治療を行う必要がある.薬物療法では,増強療法などの工夫が必要になり,nocebo反応にも配慮すべきである.CBTでは,アドヒアランス向上のために回数,内容,形式を検討すべきである.ACTおよび森田療法は,症状軽減を目標とせず行動変化を促す点が共通し,まさに難治例に適合する治療法といえる.
症例報告 | 1023-1031頁
長岡 大樹,谷口 豪,藤岡 真生,庄司 瑛武,榊原 英輔,近藤 伸介,笠井 清登
非けいれん性てんかん重積状態(NCSE)とは,けいれん等の運動症状は目立たないものの脳波上のてんかん性電気活動と意識障害が持続する状態である.てんかんの既往のない40歳代男性が抗うつ薬調整後に強直間代発作を起こした.発作後の経過観察中に見出された行動変容をNCSEと診断し,治療後に躁症状を呈した.精神科医療でもNCSEを鑑別して治療する必要がある.
特集 | 1032-1065頁
竹田 康二,久保 彩子,下里 誠二,野村 照幸
本特集では,「医療観察法医療における治療技法―一般臨床への般化・還元をめざして―」というテーマのもと,「医療観察法医療のこれまでとこれから」,「医療観察法におけるクロザピン治療―地域生活を見据えた治療抵抗性統合失調症治療―」,「包括的暴力防止プログラム(CVPPP)の一般精神医療への展開」,「クライシス・プランによる協働的な病状管理―リカバリーに向かう協働計画―」について論じる.
21世紀の「精神医学の基本問題」―精神医学古典シリーズ― | 1066-1079頁
江口 重幸
Janet, P.(1859~1947)は,解離や外傷性記憶の提唱者として知られている.論文前半では,1886年の「解離の法則」の発見にいたる初期論文を検討し,後半では,Janetの「行動の心理学」や,命令と服従からなる言語論,社会的感情論,初等的知性論など後期理論を紹介した.彼の心理哲学は,人間科学全般を横断しながら,批判的で脱構築的な視点を与えるものである.

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