精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 923-931頁
髙橋 隼,曾 秉濤,李 正達
非侵襲的脳刺激(NIBS)はアンフェタミン使用障害(AUD)/メタンフェタミン使用障害(MUD)の有望な治療法だが刺激プロトコルによる効果の差は明らかでない.今回,様々なNIBSプロトコルまたは薬物療法のAUD/MUDの渇望への効果を比較したランダム化比較試験をnetwork meta-analysisに組み入れ、有効性と受容性を比較した.
原著 | 932-943頁
稲垣 中,橋本 亮太,稲田 健,坪井 貴嗣,三島 和夫,小路 純央,齊尾 武郎,安田 由華,横井 優磨,小田 陽彦,加藤 正樹,岸田 郁子,岸本 泰士郎,齊藤 卓弥,冨田 哲,古郡 規雄,松尾 幸治,渡邊 衡一郎,木下 利彦,三木 和平,三野 進,三村 將
2020年に厚生労働省は10種類の安定確保医薬品たる向精神薬を指定したが,この時は諸事情あって,少数のエキスパートの意見に基づいて,これらを選定せざるを得なかった.本研究では精神科医,薬剤師,当事者・家族に対してweb調査を実施した後に,デルファイ法に準じた方法で意見集約を行い,精神科の全ステークホルダーの意見を踏まえた安定確保医薬品を再選定した.
資料 | 944-950頁
松原 拓郎,木﨑 祐哉,長谷部 憲一
クリニカルパスの定義によれば,パスにはアウトカムの設定,評価,記録,バリアンス分析が含まれなければならない.今回我々は精神科救急を実施する医療機関を対象に実態調査を行ったが,定義を満たすパスが普及していない実態が明らかになった.定義を満たすパスが普及しない主要な要因として,看護記録の困難性と電子カルテシステムの機能制限があると考察した.
特集 | 951-981頁
張 賢徳,八木 淳子,桝屋 二郎,太刀川 弘和
本特集では,「コロナ禍の自殺の増加について」というテーマのもと,「自殺の急増について考える―なぜ日本では自殺が急増するのか―」,「コロナ禍での女性の自殺の増加について-2021年までを振りかえって―」,「コロナ禍における日本の児童思春期の自殺について」,「マスクとワクチン―自殺と報道の関係について―」について論じる.
21世紀の「精神医学の基本問題」―精神医学古典シリーズ― | 982-988頁
内海 健
Minkowski,E.の思想を特徴づけるのは,生命的なものという領域にその軸足を置き続けたことである.それは,精神と身体,心と脳といった不毛な二項対立が,解決も解消もされぬまま並立している現在の精神医学にとって,語り継がれるべき貴重な水脈である.そのなかにあって,今回は彼の主著である“La schizophrénie”を取り上げ,生命論的な視点から解説を加えた.

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