神谷美恵子は,ハンセン病に関する精神医学研究,長島愛生園での精神科医としての活躍,数多くの著作や翻訳,戦後のGHQの翻訳・通訳で知られる著名な精神科医である.類稀で一見華やかな美恵子の人生は,葛藤に満ちた極めて困難なものであった.本稿では,日記や書簡集に残された生々しい言葉や想いに寄り添いながら,美恵子の生涯と苦悩について解説した.
社会人になって初めて自閉スペクトラム症(ASD)と診断される人が増加している.ASDは多数の遺伝子がかかわる症候群で,社会的動機づけの障害が推定されている.特異的な薬物療法はまだ開発されていない.社会モデルに沿ってASDの人たちの特性に合理的配慮を行い,多数派である非障害者のルールを障害者にあわせて柔軟に変更することで,皆が働きやすい社会が生まれる.
原著 | 027-041頁
志村 哲祥,石橋 由基,横井 克典,西川 朋希,岬 昇平,小嶋 麻美,今泉 佑花,古井 祐司,井上 猛
食事等の生活習慣や睡眠とメンタルヘルスとの関連が近年示されているが,その因果関係や影響量についての検討は乏しい.本研究は多数の一般就労者で縦断調査を行い,各種生活習慣や睡眠の問題は,精神的不調の結果ではなく原因の側面が強いことを明らかにした.生活習慣・睡眠衛生指導は,精神的不調の改善や予防に有益であると考えられる.
特集 | 042-070頁
木下 大生,榎戸 芙佐子,松本 俊彦,宮地 尚子
本特集では,「精神科医療における『感情労働』」というテーマのもと,「障害者支援施設における支援に対する外的要因の影響についての試論」,「精神科医療と感情労働」,「日本社会精神医学会相模原事件特別委員会の問題意識と活動」,「精神科医療における感情労働とトラウマ―環状島モデルから考える―」について論じる.