精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

総説 | 0329-0343頁
清水 加奈子,加藤 敏
遷延化した死別反応(病的悲嘆)を新たに精神科診断学に取り入れる動きが優勢である.病的悲嘆を診断学に含むことは,人間にとって不可避の死別反応を病気とみなす中で生じる曖昧さを無視しかねない.この問題に向き合うには,病的悲嘆診断の意義,成立過程とともに,これまで死別関連精神障害が精神医学上でどのように扱われてきたかを見ていく必要があるだろう.
原著 | 0344-0355頁
國塚 拓郎,安部 弘子,鈴木 雄太郎,染矢 俊幸
本研究では比較的急性期で入院中の日本人統合失調症患者を対象とし,統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版を用いて対象の臨床的特徴との関連を検討した.こうした一群においても,日本人統合失調症患者の認知機能にはさまざまな臨床的特徴が影響していることが明らかとなった.
資料 | 0356-0365頁
平野 羊嗣,王 百慧,謝 明憲,黃 宗正,黒木 俊秀,神庭 重信
台湾精神医学の発展と日本のかかわりについて,台大醫院精神部五十年紀要・日治時代精神病學史をもとに,その歴史を振り返った.紀要には,台湾精神医学の礎を築いた,中村讓,竹内八和太,中脩三による当時の授業の様子と,同国の精神医療の事始めの状況が克明に記録されている.本資料は,“現代の台湾の精神医学者による台湾精神医学史の回顧”という点で意義深い.
統合失調症の治療は薬物療法が最も一般的である.薬物療法が困難な背景があり,幻聴や妄想にシステムズアプローチに基づいた精神療法で,症状の軽快から社会復帰につなげることができた症例を報告する.システムズアプローチとは症状よりも関係性を重視するものの見方であり,精神科医にとって有用な考え方の1つであると考える.
特集 | 0376-0404頁
野田 賀大,鬼頭 伸輔,伊津野 拓司,中村 元昭
本特集では,「反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法の適正使用指針について」というテーマのもと,「反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法の適正使用指針について―うつ病に対するrTMS治療に関する世界のガイドラインの観点から―」,「反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法の適正使用指針―実施施設基準,実施者基準など―」,「反復経頭蓋磁気刺激療法の実際と留意事項」,「反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法の適正使用指針―背景にある考え方―」について論じる.
第114回日本精神神経学会学術総会 教育講演 | 0405-0411頁
塚﨑 稔
わが国独自の精神療法である内観療法の発展過程を概観し、東洋的視点から内観療法の作用機序を論じた。さらに、内観療法はどのような患者へ適応できるのか、また日常臨床での応用方法等を述べるとともに、内観療法の体験や研修の場として日本内観学会が主催する内観研修制度についても説明した。
第114回日本精神神経学会学術総会 教育講演 | 0412-0418頁
上村 直人
2017年3月12日から新たな改正道路交通法が施行され,75歳以上の免許更新者は交通違反の有無にかかわらず,認知機能検査で認知症のおそれがある第一分類と判断されれば,医師による認知症の判断を受けることが義務化された。そこで、認知症の人の診療に関する改正道路交通法や,医師の任意通報制度、運用開始後の精神医学的課題について述べた.

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