精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 0907-0913頁
篠崎 元
脳波はせん妄の特徴的な所見である広汎性徐波を正確に検出できることが知られているが,臨床場面で多数の患者に対するルーチン検査としては実施しにくい。本研究では,被験者の前額部から,2チャンネルの脳波シグナルを短時間測定し,せん妄の検出を可能とすることをめざした。現在までに100名以上からデータを取得し,感度,特異度とも80%前後を達成している.
約60年前に国際条約に基づいた,国際協調による法と刑罰による薬物規制が開始されたが,近年,その弊害が認識されるようになった.代わって,従来の薬物使用量低減対策を補完する公衆衛生政策として,ハーム・リダクション(薬物使用による二次被害低減対策,HR)が注目されている.本稿では,国際社会がHRを採用するに至った経緯とHR政策の成果について概説した.
総説 | 0926-0940頁
糸川 昌成,大島 健一,新井 誠,鳥居 洋太,久島 周,入谷 修司,尾崎 紀夫,雑賀 里乃,水谷 隆太
統合失調症剖検例の脳組織の構造を放射光ナノCT法により三次元解析したところ,神経突起の曲がり方(曲率)が対照例の1.5倍の値を示した.最も高い曲率の症例ではGLO1遺伝子に変異があり,治療抵抗性の臨床像が同定されていた.統合失調症での神経細胞の構造変化については,長年,困難な検討が続けられてきた.本研究の成果はこの懸案に光明を与えうる.
本特集では,「学校保健におけるアンチスティグマ―メンタルヘルス・リテラシーの拡大をめざして―」というテーマのもと,「わが国の学校保健におけるアンチスティグマをどう考えるべきか―教科書検定に向けて―」,「西欧諸国における学校メンタルヘルス・リテラシー教育とアンチスティグマキャンペーン」,「学校教員のメンタルヘルス・リテラシー―教員の現状と今後の教員養成教育に向けて,特に自殺予防教育と道徳科教育に注目して―」について論じる.
第115回日本精神神経学会学術総会報告 | 0965-0967頁
染矢 俊幸
2019年6月20日からの3日間,新潟市で開催された第115回日本精神神経学会学術総会について振り返る.各種シンポジウムやワークショップ,特別講演など充実したプログラム内容に加えて,一般演題数は1200演題を数え,新たに企画された各大学,学会および団体の活動を紹介した特別ポスターセッションは多くの来場者で賑っていた.

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