精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

総説 | 701-712頁
木ノ元 直樹
現在の医療関係訴訟の動向(新規提訴件数の推移等)と医療に対する司法判断のポイント(注意義務違反の判断基準等)を示した上で,精神科医療をディフェンスする立場で弁護活動をしてきた筆者の経験に基づき,特有の事情(精神科医療に対する偏見等)も睨みながら,「正当な精神科医療の擁護」と「あるべき精神科医療の模索」に資する精神医学と法の相互理解へのヒントを提示する.
資料 | 713-729頁
河野 稔明,他
入院後1年以上の長期在院患者を調査したところ,その後1年間に16.3%が退院したが,退院先は転院と死亡が合わせて約3分の2に上った.転科を伴う転院でも大半は精神科に戻ることが前提で,退院患者の4割以上は実質的に精神科で入院を続けていた.本稿では,長期在院患者の年間退院率,退院先を詳細に示し,先に報告した新入院患者の退院動態と比較しつつ考察した.
本特集では,研究面で国際的に活躍できる人材の教育を中心に,臨床と研究の双方に渉って問題意識を持ち,地域医療に貢献する人材の成長のための教育などの教育目標の再検討と明確化,米国などの大学院教育を踏まえた上でのカリキュラム,メンター制度,奨学金制度等を含む日本の大学院教育の改善,行政としての大学院教育に対する政策と展望などについて論じた.
特集 | 756-779頁
齊藤 卓弥,他
本特集では,「大人のADHDの診断はどのようにあるべきか?」というテーマのもと,「DSM-5」の改訂によってADHDの診断基準が変更になり,新たに成人期のADHDが定義された.新たに定義された成人期ADHDの適性診断,特徴的な臨床像,気分障害・不安症・パーソナリティ障害との併存などにつき臨床に則して概説する.
教育講演 | 780-787頁
南郷 栄秀
製薬会社の説明会やパンフレットは医師の情報源として大きな位置を占める.製薬会社はより効果的に製品の特徴を宣伝するが,その手法には一定のパターンがあるので,情報の受け手である医療者がそれを認識して情報を適切に読み取ることが大事である.医師は,薬の効果についての情報を慎重に評価し,それを患者のために情報を役立てることが必要である.
職域メンタルヘルス活動の基本的なルールは,法律や判例法理によって規定されているため,職域で活動する際にはそれらに関する基本的な情報を得ておくことが望ましい.メンタルヘルスの専門家である精神科医が積極的に職場に入っていくことで,職域メンタルヘルス活動の意義は大きな拡がりをみせるはずである.
日本精神神経学会では「臨床研究の利益相反(COI)に関する指針」及び細則に基づき,学術総会,学会誌発表でのCOI開示を求め,役員・委員等のCOI申告を求めている.2014年の役員等申告では,対象者455名中COIなしの申告が68.5%,ありの申告が23.1%であった.昨今の社会情勢も踏まえ,今後さらに適切なCOIマネジメントが求められる.

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